第3話『運営チームからのお知らせ』
翌日、目を覚ました3人の目には、何も映っていなかった。正確には、ただただ真っ暗な闇だけが見えていたのである。
(…何だ?どこだここ?)
酔っ払った結果を今の状況だとするならば、記憶を辿れば答え、とまではいかなくともヒントぐらいは見えてくるものである。但しそれはあくまで自らが現状に直接足を踏み入れた場合の話である。
「パンッ!」
手を叩いたのはジュマだった。彼の趣味はゲームと音楽。それも、自ら楽曲を作り、各種録音までするガチ勢だ。そんな彼だからこそ、今いる場所についてのヒントを音の響き方から探ろうとしたのだ。
(パルパ)
「すいません、どなたか居られるんですか?」
ジュマの拍手の音に反応したパルパが、ゲーム時の素行とはギャップだらけな口を開いた。
(ジュマ)
「パルパ?」
(パルパ)
「え?ジュマ?何で?」
(ジュマ)
「わからんけど、何でここ…ってかここどこ?」
(パルパ)
「知らん、てか面子的にエミルもいるんじゃ?」
エミルの反応はない。恐らくまだ夢の中なのであろう。
(パルパ)
「まだ寝てるか、ここに来てないか…」
(ジュマ)
「探せ!女体の全てをおいてきた!」
ジュマの下品な言葉の意味を、言った本人も含めて考えたか、数秒の間が持たれた。
(パルパ)
「手探りだから不可抗力!」
悪ノリコンビがエミル連山を求めて動きだそうとすると
「お前らの考えはよ~く分かった」
聞き覚えのある声が聞こえた。
(ジュマ)
「あ、起きた?」
(エミル)
「先に言っとくが、私からは見えてるからな」
(ジュマ)
「ん?どゆこと?」
(エミル)
「多分アサシンの暗視と思う」
言っている意味は理解できるのだが、それが常識的に考えて非常識な事だというのも理解している。
(パルパ)
「中の人なのに?」
(エミル)
「うん。…だから声を頼りに近付いてくるの、ヤ・メ・ロ♪」
どうやら見えていると言うのは間違いないようだ。
(ジュマ)
「何でアサシンの暗視だと?」
当然の疑問を投げ掛けたその時
「ガシィン!!」
突如大きな音が聞こえると同時にパルパの叫び声がこだました。
(エミル)
「アサシンスキルのトラップも使えたからな」
納得しかなかった。
これをきっかけに彼らは様々な仮説を立て、確認を始めた。普段のおかしなプレイを鑑みるに、元々3人とも頭は良いのだろう。使い方を間違えているだけで…。
ここで理不尽の理メンバーのプロフィールを紹介しておこう。
『パルパ』
役職:ギルドマスター
職業:白魔法使い
レベル:999(カンスト)
I県出身 21歳 ♂
『ジュマ』
役職:参謀
職業:黒魔法使い
レベル:999(カンスト)
F県出身 29歳 ♂
『エミル』
役職:副ギルドマスター
職業:アサシン
レベル:999(カンスト)
K県出身 24歳 ♀
3人がいた暗い空間は15メートル四方程度の部屋のような壁のある空間だった。出入口らしきものも、窓も、仕掛けのようなものもなく、とりあえず一旦、閉じ込められていると仮定する事になった。
3人はジュマの火魔法を取り囲んで静かだった。状況の整理と確認、共有をする中で、理不尽の強みの大前提とも言える壁を抜けるなどの脱出方法が使えないという現実をも確認するに至ったことによる現状の行き詰まりによる沈黙であった。
─ こちらは「The Real Life Of Fantasy World」運営チームです ─
沈黙を破ったのは、空中に出現した光る文字とそれを音読するどこか機械じみた声であった。
─ 平素より当ゲームをプレイしていただきましてありがとうございます。覇者の塔100階層を攻略いたしましたギルド「理不尽の理」に所属される皆様にスペシャルクエストが発生しております。しかしながら、運営チームの想定していない攻略であった為に、一時的に皆様を隔離してございます。つきましては、運営チーム責任者との面談をお願い致します ─
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