第7話 心
今日は久しぶりの休日であったが、心が休まる気はしなかった。時間や行動に何ひとつ制約の無い状態で木漏れ日を浴びたり、鳥のさえずりに耳を傾けたりしていることに、違和感を覚えていた。初夏の爽やかな風は、私に何のために生きているのかと問い詰めてくる。耳を塞ぎたくなる。成長した息子、娘が、フライングマシンから手をふっている。私は手を振り返し、芝生の上に腰をおろした。
暫くして、どこからか、祭囃子が聞こえてきた。祭りの季節には、さすがにまだ早い。鼓を軽快に叩く音、陽気な笛の音。近くのコミュニティセンターか何かで、練習をしているのだろうか。私は立ち上がり、祭囃子に向かって歩いていた。しかし、どうしたことだろう。歩けば歩くほど、祭囃子は遠ざかっていき、今ではもう全く聞こえていない。私の様子を案じた息子が、私の背に声をかけた。
どうしたの?
祭囃子が聞こえたんだ。聞かなかったのか?
聞こえないよ。全く。それに祭りの季節はまだ先じゃないか?聞き間違いじゃない?
いや、確かに聞こえたんだがな。気のせいだったかな。私の耳がどうかしたのかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます