第2話 出会い
フェンリルと山を下りて村に向かっていた俺だったが、道中で悲鳴が聞こえたんで、そっちの方に行ってみればこれまたびっくりっ!何とまぁそこにはゴブリンに襲われてる子がいるじゃあありませんかっ!
真っ先にゴブリンに襲われてる女の子の構図を見て俺が思ったのは……。
『ゴブリンッ!モンスターの王道来た~~~!』
これである。ここで、もし一般人がいたらこう言うだろう。
『いや女の子方心配しろよっ!?』と。だが断るっ!いや確かに女の子は心配だけどっ!だけどもっ!目の前にファンタジーの王道とも言うゴブリンがいるんだっ!モンスター好きならばそっちに興奮するだろうっ!しかし、見たところゴブリンの造形は王道的だな。人間の子供と同程度の大きさ。醜い顔立ちに緑色の体色。手には粗雑なこん棒。腰には申し訳程度の腰布を巻いている。うん、ファンタジーゲームでよく見るタイプのゴブリンだなっ!
『ギッ!?』
『ギギャッ!』
おっと、どうやらゴブリン達も俺とフェンリルに気づいたようだ。ゴブリン達は手にしているこん棒を構えながらこちらを警戒し、うなり声を上げている。ってこれ俺、敵として見られてるっ!?ど、どうするべきか、と考えていると……。
『ヴゥゥゥゥゥゥゥッ!!!』
俺のそばに居たフェンリルも、全身の毛を逆立たせ、牙を剥き威嚇の声を上げている。……やだウチの子カッコよすぎる。……ってこんな事考えてる場合じゃないかっ!ゴブリンどもはどうだ?
『ギッ!?』
『ギィィィ……ッ!?』
フェンリルの威嚇する姿にゴブリンどもは恐れおののき、後ずさっている。流石はフェンリル。神たる狼だ。その神秘的であり、また圧倒的なオーラはいとも容易く他者を圧倒している。
『ギ、ギギィッ!』
やがて1匹のゴブリンが手を上げて仲間たちに何か指示を出したようだ。すると他のゴブリンたちがゆっくりと後ずさりしていき、指揮官らしいゴブリンも後ずさりして森の奥へと下がっていく。
どうやら見た目に反して知的みたいだな。数は向こうが上だけど、それだけでフェンリルを倒せるとは思ってないようだ。まぁ戦わずに済めばそれに越したことはない、かな。ここにはあの女の子もいるし、下手に戦闘になって巻き込んじゃったら事だし。……ってそうだ女の子っ! 俺はすぐさま地面にへたり込んでいる女の子の元へ駆け寄った。
「お~い君~!大丈夫か~!?」
俺は女の子の元に駆け寄ると、その前で地面に膝をつき彼女の様子を伺う。地面にへたり込んでいたのは、茶髪のロングヘアとファンタジー漫画に出てきそうな田舎娘と言った服装が特徴的な女の子だった。
「あ、あなた、は?」
彼女はまだ状況を飲み込めていないのか、少し戸惑った様子で俺を見つめている。
「俺は、あ~~」
って今聞かれて思ったけど、なんて答えれば良いんだこれ?異世界転生者です、なんて馬鹿正直に答えても変な目で見られそうだし。ここは無難に。
「俺はしがない旅人ですよ。相棒のフェンリルと旅をしていたら、たまたまあなたの悲鳴が聞こえたので」
「そうですか」
彼女は頷いているが、チラチラと視線がフェンリルの方へ向いている。その表情は少し怯えているような、しかしフェンリルに興味があるようにも見えた。まぁ人よりデカい狼が居たら怯えもするか。なんて事を考えつつ彼女の様子を伺う。
パッと見た所怪我は無し。出血してる様子もないけど?
「見たところ怪我はしてないようですけど、他は大丈夫ですか?頭が痛いとか、お腹が痛いとか。そういうのはありませんか?」
「大丈夫、です。殴られたりはしていないので。平気で……」
そう言いながら彼女は立ち上がろうとした。が。
「ッ!」
立ち上がった、と持った次の瞬間彼女が表情を歪めながら前のめりに倒れかけたっ!?
「危なっ!?」
咄嗟に前にいた俺が立ち上がって彼女の体を受け止める。
「だ、大丈夫ですかっ!?」
「す、すみません。さっき、ゴブリンに驚いて転んだんですけど、どうやらその時に足首をくじいてしまったみたいで。うっ」
彼女は痛みで苦しんでいるのか表情を歪めている。
「ちょっと、失礼しますね?」
俺はそう言って彼女が履いていたロングスカートの裾を軽くまくって足首の様子を見た。
「あ~~。これは確かに」
見ると彼女の右足首が少し赤くなっていた。これじゃ歩くのは大変、いや無理だな。
「あの、君の家があるのってこの近くの村、かな?」
「そうですけど、それが何か?」
「なら俺とフェンリルで村まで送るよ。その足じゃ一人で歩いて帰るのも無理だろうし。俺たちも村に少し用があったんだ」
「そう言ってもらえると、ありがたいのですが。出来ません」
「え?」
まさかの言葉に俺は耳を疑った。そして彼女の様子を伺うが、彼女は何か決心しているような表情を浮かべている。
更には、彼女は俺から離れるように立ち上がった。
「私は、これから町に行かないといけないんです……っ!どうしても、町へっ!」
「えっ!?い、いやいや無理だよっ!」
足を引きずってでも前に進もうとする彼女を俺は前に回り込んで咄嗟に止めた。いやだって無謀だっ。片足首を捻挫しているんだから無理に決まってるっ。
「その足で町までなんて無理だよっ!距離だってあるし、大体このまま真っすぐ言ったら山を登るルートじゃんっ!その足で登山なんて、自殺行為だよっ!」
「自殺行為でもなんでも、私はいかなきゃいけないんですっ!!」
彼女はそう言って、進もうとする。その姿はひどく焦っているようで、文字通り1分1秒を争う理由があるのだろう。けれど、このまま彼女を行かせたとしても見殺しにするような物だ。
「分かったっ!君が急ぐ理由はその様子を見てれば分かるっ!でも一つだけ教えてくれっ!君が急ぐ理由は何っ!?もしかしたら、俺が力になれるかもしれないっ!」
鬼気迫る様子の彼女を説得するなり、話を聞いてもらうなりする為に俺は声を張り上げた。
「えっ?それって、どういう意味ですか?」
「俺の家族、このフェンリルならそれこそ飛ぶような勢いで森の中だろうと駆ける事が出来る。いざとなれば、君を町まで送り届ける事が出来る。けれど、俺にもちょっと特別な力があるんだっ」
「特別な、力?」
「あぁ。急いでいるから要点だけ説明すると、俺は特殊な力を持ったモンスターを生み出す力がある。その力を使えば、例えばそうだな。どんな怪我や傷を治す事が出来るモンスターだって生み出せるし、強い奴。探し物が得意な奴とか。とにかく色んな力を持ったモンスターを生み出せるんだっ!」
「ッ!じ、じゃあ、毒蛇の毒を解毒する事とかも、出来るんですかっ!?」
俺の言葉を聞くと、彼女は急かすような口調と共に、殆ど掴みかかるように俺に詰め寄って来た。
「毒?もしかしてそれが、君が町を目指していた理由なの?」
「はいっ、父が、父が毒蛇に噛まれてっ!でも村にはその毒に聞く毒消しが無くてっ!町に行ってそれを買ってこないと、お父さんの命が危ないんですっ!」
彼女は、まるで縋るように俺の服を力強く掴み、目には今にもこぼれそうな程の涙を浮かべていた。
「お願いしますっ!出来るというのなら、お父さんを助けてくださいっ!」
今の彼女は、怯える子供そのものだった。父親の死に怯え涙を流す女の子だった。
「任せてっ!俺が何とかして見せるっ!」
父親の死に怯える彼女を元気づけるために、俺は精一杯、自信たっぷりの笑みを浮かべながら力強く頷いた。
女神様、早速だけど女神様から貰ったボーナス、使わせてもらうわっ!
「さぁフェンリルに乗ってっ!ここから村までならそんなに時間は掛からないからっ!」
「はいっ!」
「フェンリルッ!頼むっ!」
『ワフッ!!』
俺が声を掛けると、フェンリルは足早に近づいてきて、俺と彼女の前で腹ばいの姿勢になる。まず俺がその背に跨り、次に彼女の手を引いて、何とかフェンリルの背に乗せる。
「それじゃあ行きますよっ!しっかり俺に捕まってて下さいねっ!」
「はいっ!」
俺の後ろに座った彼女は、俺のお腹の辺りに手を回し、ギュッと抑える。
「よしっ!行くぞフェンリルッ!向かうは村だっ!」
『ワフッ!!』
フェンリルは一声鳴くと立ち上がり、駆け出した。
「きゃっ!」
どうやらその速度が思っていた以上なのだろう。彼女の悲鳴が後ろから聞こえる。が、フェンリルはそんなのお構いなしに俺たちを乗せ森の中を駆け抜ける。
「は、速いっ!こんなに速く、森の中をっ!?」
「あんまり喋らない方が良いよっ!舌を噛むからねっ!」
「ッ!は、はいっ!」
フェンリルの背に跨る事、10分ほど。
「あっ!」
飛ぶような勢いで駆けるフェンリルは物の数分で山を降り切り、そこから更に村まで草原の上を駆け抜けた。しばらくすれば村が見えてくる。村が見えて来たからか、後ろにいた彼女が声を上げた。
しかしそれも束の間。あっという間にフェンリルは村の入り口らしい所まで来たんだけど……。
「な、何でぇこのデケェ狼はっ!?」
「おいっ!男衆を呼んで来いっ!魔物が来たぞっ!」
あ~~~。皆さん農具を手にメッチャ警戒してらっしゃる~~。いやまぁ、そりゃそうか。こんなおっきい狼が来たらそりゃ警戒もするよなぁ。ましてフェンリルは狼。つまり牛やら鶏、牧畜を襲う側の動物だもんねぇ。
「あ~~。すみません。ここはあなたに誤解を解いてもらうしかないようです」
「そ、そのようですね」
俺が困り顔で声を掛けると、彼女も苦笑を浮かべながら頷いた。
「フェンリル、悪いけど少し姿勢を低くして」
『ワフッ!』
俺がお願いし、その場で腹ばいになるフェンリル。
「んっ!?お、おい見ろあいつの背中っ!ありゃバロルんとこの娘のキャシーちゃんじゃねぇかっ!」
すると、フェンリルの頭に隠れて見えなかった俺たちが見えて気づいたのか、農民らしいおっちゃんが声を上げ、瞬く間に周囲の男たちがザワザワとざわめく。その姿を後目に、俺はフェンリルから降りる彼女に手を貸し、更に片足を挫いている彼女を支えるために肩を貸す。
「皆、聞いてくださいっ、この人は、怪しい人じゃないんですっ。この人は旅人で、山の中でゴブリンに襲われていた私をこの大きな狼と一緒に助けてくれたんですっ」
「えっ!?ほ、本当なのかいキャシーちゃんっ!」
「はいっ、ですから、この人もこっちの大きな狼も、危険は、うっ!」
何とか肩を貸しているけど、痛みで呻く、キャシーと呼ばれた女の子。
「キャシーちゃんっ!?大丈夫かっ!?」
「ど、どうしたんだっ!?」
「森の中でゴブリンに襲われた時、倒れて足を挫いたみたいなんですよ」
慌てるおっさんたちに、俺が説明する。彼女は今も痛みに耐えるように歯を食いしばっている。
「あの、彼女の家まで案内してくれませんか?このまま彼女を立たせておくのも辛いでしょうし。お願いします」
「わ、分かった。こっちだ」
おじさんの一人が戸惑いながらも頷くと、案内してくれた。俺はキャシーに肩を貸しおじさんの後ろを付いて歩く。そしてその少し後ろをフェンリルがトテトテと付いて来て、更にその後ろをおっかなびっくり農具を持ったおっさんたちが続く。
やがてたどり着いたのは、ファンタジー漫画でよく見かける一軒家だった。
「ここが君の家?」
「はい、そうです。中に、お父さんがいるはずです」
彼女に聞いたんだから間違いないだろう。俺は彼女に肩を貸したまま、扉を開く。音を立てて開かれる扉。中に入ろうとしたのだが、ふとフェンリルの事を思い出して振り返った。
『?』
俺と視線が合い、フェンリルはお座りの姿勢のまま小首をかしげている。……うん、可愛い。ってじゃなくてっ! 成人男性よりも更に二回り以上大きいフェンリルが家の中に入るのは無理だな。
「フェンリル。悪いけど外で待っててくれ。その体の大きさじゃ家の中には入れないし」
『ワフッ!』
『分かった~』、と言わんばかりに優しく鳴くフェンリル。とにかくこれで良し。俺はキャシーに肩を貸して家の中へと歩みを進めた。
玄関から入って少し歩くとそこはリビングだ。奥には扉が複数ある。が、リビングに人影は無い。
「お父さんっ!お父さんっ!」
「キャシー、キャシーか?」
彼女が奥に向かって呼びかけると、ドア越しに微かに聞こえる男性の物と思われる声。
「帰って来たのか、キャシー。ごほごほっ!」
奥の扉の一つを開けて現れたのは、かなり衰弱した様子の男性だった。今にも倒れそうな程フラフラで、顔色もかなり悪い。呼吸も荒いし、一目で『ヤバい』と実感した。
「ッ。だ、誰だ?そっちの、お前は?」
「俺は、通りすがりの旅人ですよ。近くの山の中を相棒と移動していた時、ゴブリンに襲われていたお嬢さんを助けたんです」
「何ッ!?キャシー、お、お前はっ!ごほっごほっ!あ、あれほど山には、行くな、とっ!げほげほっ!!」
「お、お父さんっ!」
彼女は片足を引きずりながらも、激しくせき込む親父さんの元へと歩み寄り、その背中を優しくさすると手近な椅子に座らせた。
「お父さん。大丈夫だからね?きっと、きっとこの人が何とかしてくれるからっ!」
彼女は涙を浮かべながら、せき込む親父さんを必死に励ましている。こりゃ、後がないのは一目瞭然だ。とはいえ、ここで『俺にも問題を解決できる確証はないんだけど?』なんて口が裂けても言えないよな。こんな状況じゃあ。
何てことを考えていると、彼女が縋るような視線で俺を見上げてくる。
「お願いしますっ!どうか、どうか父を救ってくださいっ!私にできる事なら何でもしますからっ!」
そう言って彼女は、俺の前で何と土下座まで始めた。それに驚き、思わず息を飲んでしまう。
彼女の必死さこそ、彼女にとって親父さんがどれだけ大切かって事の表れだ。そんな親父さんの命が俺の、正確には俺の≪
まぁ、ここまで来たらやるしか無い。
「分かったから頭を上げて。それに、君の親父さんを助けた後の事は、文字通り後で良い。今は親父さんの方が先決だ。見たところかなりヤバいらしいし」
そこまで言って一旦言葉を区切り、周囲を見回す。
こんな家の中で能力を使ったら危ない。
「一旦外に出よう。そこで親父さんを救う、俺の家族を召喚するよ」
「は、はいっ!お願いしますっ!」
俺とキャシー、俺が肩を貸して何とか外に連れてきた親父さんが外に出ると、家の傍にはいつの間にか大勢の村民たちが集まり、遠巻きにフェンリルを警戒していた。で、肝心のフェンリルはと言うと……。
こ~れまた家の前で伏せた姿勢のままの~んびりしつつ盛大に欠伸までしてるんだよねぇ。……余裕っすねフェンリルさん。いやまぁあなたなら大抵の相手なんて鎧袖一触でしょうけどさ。
「ッ。な、何だ、この大きな、狼は?」
「俺の家族。相棒ですよ。このフェンリルが居たからお嬢さんをゴブリンから助けられたんです」
「ッ。じゃああんた、『ビーストテイマー』なの、か?」
ん?ビーストテイマーって、調教師って事か?まぁ今はそっちを気にしても始まらない。
「そう言う話は良いですから。今優先すべきは、あなたの治療です。さっ、ここに腰かけてください」
「あ、あぁ」
俺は近くにあった切り株の上に親父さんを座らせる。
さて、あとは俺の力で、親父さんを治癒出来る力を持ったモンスターを生みだすだけだな。とにかくまずは……。
「≪ツールオープン≫」
能力の起動ワードを口にし、眼前にディスプレイを展開する。
「ッ!な、何ですかそれっ!?」
「え?」
不意に後ろから聞こえた声に振り返ると、何やらキャシーや親父さんが驚いた様子で俺の方を見つめていた。……もしかして二人にもディスプレイが見えているのか?そういう仕様なのか。
「あ~、えっと。こいつは俺の力の一部、かなぁ?」
とりあえず彼女らには曖昧な事を言っておく。説明し始めたら色々話さないといけないし。今は治療が最優先だ。
さて、改めて親父さんを助けるモンスターを生み出すわけだけど。スキルに関してはもう決めている。あらゆる病魔や毒、怪我を治癒する光を放つ、そういう治癒スキルだ。とはいえ、問題はどんなモンスターにそのスキルを搭載するか、なんだよなぁ。折角1万ポイントもあるんだから、これを使い切るつもりで強いのを、とは思うんだけどなぁ。
「う~ん」
俺は唸りながら周囲を見回す。何かヒントは無いかな?
「ん?」
その時ふと、俺の目に留まったのはキャシーだった。女性。女性にゆかりのあるモンスター。治癒の力を持つとされ、強い存在。
「あっ」
と、そこまで考えて俺は思いついたっ!よしっ!ベースは『あれ』にしようっ!
俺はすぐさま音声コマンドで能力やステータスを入力していく。フェンリルと違って、今回は1万ポイントとはいえポイント制限ありなので、速さや強さなどステータス面はフェンリルに一歩及ばない。それでも、こいつの真価はスキルの方だっ!最後にスキルを設定し終えると。
『以上で各種設定を終了します。モンスターを顕現させますか?』
「あぁっ!頼むっ!」
準備は出来た。あとはモンスターを呼び出すだけだ。
『では、モンスターの顕現を開始します』
ディスプレイが消え、フェンリルの時と同じように虹色の魔法陣が現れる。そこからあふれ出した光の粒子が一つにまとまって行き、形を成す。
「こ、これってっ!?」
「一体、何、がっ!?」
後ろにいたキャシーと親父さんの驚く声が聞こえ、少し離れた所にいたおっちゃんたちも驚き声を上げている。
「これが俺の力さっ!」
その驚きっぷりが面白くて、俺は思わず笑みを浮かべながら叫んだ。そして、目の前で形を成す『それ』を、今まさに生まれようとしているモンスターの名を、俺は叫ぶ。
「来いっ!『ユニコーン』ッ!」
名を呼んだ次の瞬間、より一層強く光が瞬いた。あまりの光量に目を背け、やがて光が収まると視線を戻した。
「あっ」
そして視界に入って来たのは、現実離れした美しさを持つ存在、ユニコーンだった。フェンリルと同じように純白の肌と鬣を持つ、額に一本の鋭い角を持った馬の姿をした、フェンリルと同程度、或いはそれ以上の知名度を持つであろう神話上の生き物、『一角獣ユニコーン』。
『イィィィィィンッ!!!』
現れたユニコーンは甲高いいななき声を響かせる。
「魔物、なのか?」
「……綺麗」
声が聞こえ、振り返ると困惑した様子の親父さんと、彼とは対照的に驚きに満ちた瞳でユニコーンを見つめるキャシー。
「あの、これが、この子がお父さんを救ってくれるんですかっ?」
「そうだよ。このユニコーンの力があれば、お父さんを助けられるはずだ」
少し興奮した様子の彼女に、俺は優しく声を掛けながら頷いた。
神話において、ユニコーンの角は毒に侵された水を清めたという逸話や、その角には強い解毒作用があると言われていたそうだ。今回俺が召喚したユニコーンは、その伝承をベースに更に治癒や治療に特化したスキルを与えてある。戦闘力はフェンリルには一歩及ばないとしても、1万あったポイントの大半を使い切って創造したんだ。その力は、十分神獣と呼べる物だろう。
「頼むぞっ!ユニコーンッ!」
『イィィィィンンッ!!』
俺の言葉に答えるように、声を上げるユニコーン。その姿はとても美しく、とても頼もしい物だった。
第2話 END
モンスタークリエイター~~転生したので大好きなモンスター達と暮らします~~ @yuuki009
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