Part2: 2人っきりの雨宿り。

「はぁ……はぁ……はぁ……」


「んっ……はぁ……っ!」


「ま……待ってぇ〜! 早いぃ〜!」


「はぁ……はぁ……」


「はぁ……んっ……や、やっと追いついたぁ〜……ちょっと……休憩……させて……」


「はぁ……はぁ……もぉ〜。最初から飛ばしすぎだよぉ〜! キミはエスコートって言葉を知らないの? さっきまでやってたトレーニングで足が重いし、それなのにキミはどんどん先に行っちゃうし……」


「キミの背中が遠くなるたびに、すごく心が折れそうになったんだから!」


「んん〜!」


「……え? 最初に追い込んでくれって言ったのは、そっち?」


「それに、数学専門の私なら、公園を一周差つけてキミが私に追いつくまでの時間を計算できると思った?」


「あ、でも、計算する前に追いついちゃうかも? ……って?」


「……んんん〜っ! もう! またそうやってキミはぁ!」


「はいはい、いいですよ〜。そうやって大人を揶揄うキミなんて、置いて1人で走りますよぉ〜だ! ふんっ!」


「……え? どちらかといえば、置いていかれるのは私の方ぉ!?」


「——っ! もう知りません! 1人で走ります!」


「……はいはい、何も聞こえませーん。キミのいつも通りのプリンの誘惑なんか聞こえませーん」


「……からかってごめんなさい?」


「……今更謝ったって、許さないんだから」


「って、あれ? 今、上から何か……」


「ん? もしかして、雨? わぁっ! 言ってる側から急に降ってきた!」


「えーっと、どこか雨宿りできそうな場所……」


「——っ! あ、あそこ! あの遊具の中なら……」


「ほら! キミも早く! 濡れちゃうよ!」


 ……。


「はぁ……はぁ……」


「ここなら、なんとかしのげそうだね……」


「はぁ……急に雨に降られるなんて、ついてないなぁ……キミは大丈夫? そんなに濡れてない?」


「ん? どうしたの? 何か落としちゃった?」


「え? ……手?」


「……あ、そうだった。キミとはさっき、喧嘩したばかりだった」


「ふんっ! キミがそんなに濡れてなくてよかったけど、別にまだ許してないから……」


「…………」


「……」

 

「……へっくちっ……汗が冷えてきたかも……やっぱり上着着てくればよかったかなぁ……はぁ……」


「……って、え、ちょ。ちょっと待って、なに? 急に近づいて」


「え? 冷えるから、体、寄せ合った方が良い?」


「——っ! だめ! 絶対にダメ!」


「いや、意地を張ってるとか、喧嘩云々じゃなくて!」


「……そういうのじゃなくて……」


「その……汗、いっぱいかいちゃってる……から」


「今私…良い匂いしない……から……」


「……」


「って、ちょっと! 話聞いてた?! 今は!」


「……え? 良い匂いがする?」


「——っ! だめっ! 嗅がないで!」


「ちょっと……ねぇ、だめ……やぁっ……んっ……やぁだぁ……」


「許す……さっきのこと許すからぁ!


「だから、そういうの禁止!」


「……はぁ、全く……いきなり女性の匂いを嗅ぐなんて、キミは相当な変態さんなんだから……」


「ほら、許したよ? そうしたら早く……」


「……え? 別に許したら離れるなんて、一言も言ってない? だから、もう少しこのままって」


「……はぁ、もう……好きにすれば?」


「…………」


「……」


「ねぇ、さっきはごめん。私、ちょっと大人げなかった」


「なんか、いつもキミに負けてばかりで悔しかったから、だから、今日ぐらいはせめてキミの背中についていきたくて……でも、実際は、全然ダメダメで……」


「んっ……ふふっ。そっか」


「私は、私のままでいい」


「確かに、キミがそう言うなら、そうなのかもね?」


「えへへ。なんか、そう言うところまでキミに負けてるような気がして、お姉さん、ちょっと悔しいなぁ〜」


「ん? でも、そう言う正直な私も好き……って、も、もぉ……」


「そうやって、すぐに私をからかうんだから」


「はい。罰として、しっかり私の体冷えないように、温めてください! はいそうです、後ろからもっと、ぎゅぅ〜って」


「……ふふっ。温かい」


「……ん……ふぅ……」


「ね、雨が止むまで、こうしてよっか?」


「え? 汗の匂いは大丈夫なのかって?」


「ふふっ。だって、キミがその匂い、好きって言ったんだよ?」


「それに……」


「私も、キミの匂い……好きだから」


「だから、雨が止むまで、こうして……」


「……うん。えへへ、ありがと」


「うん……私も、大好きだよ」

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