文ちゃん先生と秘密の補習授業。

あげもち

Part 1:放課後、二人っきりの教室で


「はぁ……はぁ……はぁ……」


「ごめん! ちょっと教頭先生に呼び出されちゃって……」


「……って、あれ? 寝ちゃってる……のかな?」


「おーい、ずっと机に突っ伏してると、肩とか首痛めちゃうよ〜? 起きてー」


「……もう、キミは本当に……」


「おーい、起きてー。そろそろ始めるよー?」


「ねえってば〜……はぁ。キミから提案して来た補習授業なのに、当の本人が爆睡してるのって、どうなのかな……」


「ほーら、早く起きて〜。じゃないと学校も閉まっちゃうよ〜?」


「……」


「……もう。確かに最近体育祭とかの後片付けとか、委員会で忙しかったのは分かるけど、そんな豪快に眠ることはないんじゃないかなぁ」


「……それに、私だって、今日のためにちゃんと準備して来たのに……」


「……」


「……本当に、寝てるんだよね? 教室もなんか暑いし、まさか熱中症とかじゃないよね?」


「……ちょっと確かめてみよっか」


「こうやって、脇腹をツンって……あ、体がピクってした。ふふっ。なんかちょっと可愛いかも」


「一瞬、息してないのかも、って思っちゃったけど。本当に寝てるだけなんだ。よかったぁ」


「……でも、本当に寝ちゃってるんだよね?」


「……へぇ〜、そっかぁ〜。そ〜なんだぁ〜」


「私がいるのに、そんなことしちゃうんだぁ〜」


「じゃあ、ちょっとだけイタズラ。しちゃおっかなぁ?」


「キミはいつも私をおちょくるから、今日は先生として、隣に住むお姉さんとして」


「大人の怖さを分からせてあげなくちゃね♪」


「それに、いくらキミとはいえ、約束を寝てすっぽかすのは、人としてマナー違反なわけだし?」


「そんな悪い生徒は、私がしっかり、補習授業……してあげなきゃね?」


「それじゃあ……えーっと……まずは〜」


「うん。そのガラ空きの脇腹をツンツンってしてみよっか?」


「椅子に足をぶつけないように、そぉ〜っと、キミの後ろの回って……


「そうしたら、次はこうやって、下の方から少しずつ上にずらしながら……」


「ツンツン、ツン」


「わぁ……ふふっ。かわいい……」


「人差し指が、キミの脇腹に触れるたびに、ピクピクって」


「もしかして、キミって意外と脇腹弱かったりするのかな?」


「ふふっ。キミの弱点、一つ知っちゃった♪」


「それじゃあ、もう少し……」


「ツンツン……ツンツン……」


「はぁぁ〜……かわいぃ……」


「ふふっ。 なんか楽しくなってきちゃった♪」


「そーしたら、次はキミのお腹のお肉を摘んで……」


「ふに、ふに……」


「……って、へぇー。意外と摘める部分少ない……」


「それに、背中は広いのに、意外とウエストは細くて……もしかして、意外と鍛えたりしてるのかな?」


「……だとしたら、私も最近体重とか増えて来ちゃったし、今度一緒に運動、してみたいなぁ……」


「ん、うん……」


「まぁ、私のことは、今は置いといて……」


「これだけやっても起きないなら、もっといろんな事してみていいよね?」


「そうしたら、次は、キミの背中を、私の人差し指で……」


「ツゥー……ツゥー」


「って、なぞっちゃおうか」


「上から下に……ツゥー」


「次は、下か上に……ツゥー」


「横にも……ツゥー、ツゥー」


「ふふっ。なんか癖になりそう♪」


「それじゃあ、大きくカタカナで……『ス』……」


「わぁっ! も、もしかして、起きちゃった?」


「……」


「起きてない? ……はぁ、よかったぁ……」


「突然大きく震えたから、びっくりしたぁ……でも、ふふっ。背中もそんなに敏感なんだ」


「意外とキミって、弱点が多いのかも?」


「ん〜。そうしたら、次は……」


「その可愛らしいお耳さんに、吐息、ふーふー、してみようかな?」


「よいしょっと……起こさないように、ゆっくり顔を近づけて……右耳から……」


「ふぅー……んっ。ふぅー……」


「ふふっ。少し体ぴくってしたぁ。かわいい♪」


「それじゃあ、次はもっと長めに」


「ふぅぅー……ん、ふぅぅー……」


「ふふふっ。次は左側も……」


「ふぅー……んっ。ふぅー……」


「もっと長めに」


「ふぅぅー……ん、ふぅぅー……」


「ふふふっ。なんか楽しくなって来たかも」


「確かこういうのって、ASMRっていうんだっけ?」


「私が好きなやつは確か、こうやって……」


「耳元で、ちょっとエッチなこと言ったりするんだよね」


「でも、キミと私はまだ、先生と生徒だから」


「今は、私の……シたいこと、でも、囁こうかな?」


「えーっと、まずは……」


「キミと一緒に、プリン食べたいなぁ」


「あとは、また二人っきりで、デートに行ったり……」


「って、左耳ばかりで右耳も寂しいよね。それじゃあ、んしょっと」


「ふふっ。またキミの部屋でお泊まりしたり、あとは、時々ぎゅ〜って、ハグもしてほしいなぁ」


「……ふぅー。ふぅー……んっ」


「ふふっ。こんなにしても、まだ目が覚めないなんて。キミは本当にねぼすけさんだね」


「そしたら次は……このまま、いつもキミにされてる事を、そのままやり返してみよっか」


「後ろからそーっと、キミの体に腕を回して……」


「……んっ……」


「やっぱり、背中……大きいね」


「それに、この柔軟剤の匂いも……なんか落ち着く……」


「って、ダメダメ。これじゃ趣旨がずれちゃってるじゃん」


「キミが寝てるうちに、キミに悪戯をするのが目的なのに、今満足したら意味ないじゃん……」


「はぁ、まったく……私ったら」


「……って、ん? なんか、どくどくって、心臓の音がはやく……」


「……」


「え、もしかして、キミ起きてるの?」


「……えっ……えぇぇぇぇぇ〜!?」


「な、なんで! いや、ちょっと待って……いつから? てか、どこら辺から起きてたの!?」


「……」


「脇腹をツンツンされて、『キミにイタズラしちゃおっかなぁ?』、ら辺から?」


「ていうか、最初から眠ったふりをしてましたぁ? すみませんでしたぁ?」


「ってことは、さっきまでのも全部聞かれて……」


「——っ! ん〜っ!」


「もぉ〜! バカァ!」


「ずっとキミが起きなかったから! 寝てると思ってたから! いろんな事……」


「……本当に……待ってよぉ……」


「……無理だよぉ……恥ずかしくて、キミと顔……合わせられなぃ……」


「でも、可愛かった? また補習授業、やってほしい?」


「……やだ」


「もう、そうやって私をおちょくるキミのことなんて、本当に知らないから!」


「あ〜今日はもう帰りますっ! 補習授業は終わりですっ!」


「……え、『大人の怖さが』分かりました……?」


「ん〜っ! もう本当に知らないから!」


「ごめんなさいって、今更謝っても絶対許しません! 今日は顔も合わせたくありません!」


「……プリン買ってあげるんで、一緒に帰りましょう?」


「—-っ! 別に、プリンなんかで私、揺るがないからね!」


「……え、プリンを2パックならどうですか? って……」


「プリン2パック? ……3つ入りのプリンを2パックも……」


「……」


「今日……今回だけは、見逃してあげる。ほら、キミも早く帰る準備を……」


「意外と、チョロい? あーはい、そういう事言っちゃうなら、私ももう、許さないから」


「……」


「……ふふっ」


「冗談だよ。でも、キミに騙されっぱなしっていうのも、なんか悔しいから、最後に少しだけ意地悪したくなっちゃった」


「ほら、教室の鍵閉めるから、早く出て? あ、あと、学校から一緒に帰っちゃうと、みんなにバレちゃうかもしれないから、マンション近くのコンビニで待ち合わせしよっか?」


「うん。それじゃ、またコンビニで」



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