第40話 とある少女への追憶③

 


 〜9月15日放課後〜




「ってなことが、昨日あった」



 放課後、いつものファミレス。

 いつものバカ面が勢ぞろいしていた。

 太一、阿久津、雅。

 昔から変わらない腐れ縁の面々。



「七海ちゃんもつれないなぁ〜、なんで佐々木なんかに相談すんのよぉ」


「それには俺も同意だよ……」


 ため息混じりに呟いたとこで、事態が変わる訳でもない。

 しかし、改善の余地が思いつく訳もない。


「しかし、七海がイジメられてんのマジなの?」


 ジュルジュルとジュースを啜りながら阿久津はアホみたいな顔でコチラを見ている。

 ったく……、事実確認が済んでいないのにお前らを呼ぶかっててんだ。



「……俺に相談してきた時には、頬を涙の跡があった。多分トイレとかで泣いてる。あと、手首や足の打撲痕。あれは相当強く握られたり、殴られたりしないとできない」


「「「…………」」」


「……雅。今日の七海の格好分かる?」



「えっ……えっと……。何か長い袖の服着てたような……」



「……隠してたんだろな。あと、髪の裏にも絆創膏が貼られてた」


 1つ。また1つと事例を挙げる度に、皆神妙な面持ちになる。


「話も色々聞き漁った。A組の新垣とD組のヤツが目撃者。なんか知らんけど放課後に神社とかで七海が上級生に囲まれているのを見たらしい。何されてたかは分からないっつってたけど……まぁ、大体想像通りだと思う」


「……何でウチ気づかなかったんだろ。今日七海ちゃんと話したんだよ!?」


「いやいや、多分めちゃくちゃ隠してたと思うぞ。お前には特に察されたくないだろ。心配かけたくないだろうし」



 悔しげに唇を噛む雅。

 時間を共にしていたのはコイツが1番長いはずだから、思うところがあるんだろう。

 夏休みバイトしていたこと自体を悔いているのかもしれない。



「とまぁ、こっからが本題。状況を変える方法を何となく思いついたから協力してくれ」



「えぇ!? 佐々木の案!?」


 持っていた飲み物をダンっと勢いよくテーブルに叩きつける阿久津。

 うるせぇな。


「んだよ、不満か?」



「まぁ聞くだけ聞こうぜ。俺らも何とかしたいっていう思いは同じだろ?」



 さすが太一。客観的な判断力。

 クリエイターではないけど、フォロワーとしてはピカイチだ。

 自分からは何も生み出さないけど、色々と情報を仕入れ、取捨選択する力はある。



「俺が考えたのは、とりあえず1回色々なことをリセットする、かな」



 ***



「いや、あのさぁ……、佐々木。それは確かにリセットだし、七海の件も解決するだろうけど。なんて言うか……その……鬼畜?だな」


「俺は逆に清々するからいいと思うぜ! 何も考えなくてすむ!」


「あんたは馬鹿だからいいね。佐々木……アタシは反対」




 ふむ。

 思い思いの反応。


「……雅はどうして反対?」


 見るからに不機嫌そうな表情を浮かべている。

 俺の考えが相当気に入らないんだろう。


「だってさ、そんな七海ちゃんの気持ちをガン無視するような案は最悪。佐々木、見損なった」


「七海の気持ちを無視していると言う点は否めないな。……でも、事態を収束させて、に向かうための方法なんだよ」


「だから! 事態を収束させるだけでいいじゃん!! 何で余計なことすんのよ!!!」


 これは……。

 かなりご立腹のようだ。


「アタシはパス。やるんだったらアンタらでやってよ」




 言うが早く雅は席を立ち、スタスタとファミレスの入口の方へと歩いていった。



「アイツ……、金払わないで行ったぞ……」


「……佐々木、こうなったのはお前の責任だから、お前が払えよ」


「ぐぬぅ……」





 三年前。




 俺らは、七海を救うための計画を実行へと移した。




 そして、俺達は。




 ーーーーーーした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る