第20話 雅side


「いってぇ…………」


 昼間に殴る蹴るされたところが鈍い痛みを放っている。

 先ほどドリンクバーのコーラを飲んだが、口の中が沁みすぎて拷問かと思った。


「酷くやられちゃったようだねぇ」


「……まぁ、終わりよければすべてよし、かな」


 いや、むしろここからがスタートラインか…………。


 俺らはいつものファミレスにいた。

 本日のMVPである雅の戦果を、現在進行形で全員に報告している


「しっかし、よくこんなネタをゲットできたな、舘坂。普通ハメ〇りなんてスマホから拝借できないぞ?」


 太一が『○○高校あるあるbot』の投稿をスマホで開いている。

 確かに、ある意味今世紀最大級の爆弾だったとも言える。


「数日は大丈夫だな……」


 恍惚とした表情で深くうなずく阿久津。

 阿久津は、ハメ〇りを速攻で保存していた。

 何に使うのかはご想像にお任せする。


「まじできめぇ……」


 案ずるな雅。

 こればっかりはお前に同意する。


「ところでムカデ眉毛女。どんな経緯で情報を掴んだんだ?」


「普通に聞けねぇのか、この猿。……えっとねぇ、まぁ、たいちっちと佐々木のおかげもあるんだよねぇ」



 ***



 昨日、佐々木から計画を聞いてから、あたしは頭の中でずっと考えていた。

 まずは相手の弱みを掴む以上、ターゲットとコンタクトを取ることは必須。

 しかし。

 あまり深い仲になってしまっては、いざ情報を発信したときに疑われるリスクがある。

 それだけは避けたい。


 となると、まずは行動範囲の把握、かなぁ。


『ごめーん、たいちっち』


 思い立ったが吉日。すぐにたいちっちにLINEをとばす。

 すると、速攻帰ってきた。


『どした? 3人の情報?』


 さすが話が早い。


『その3人って放課後何するとか、バイトとか、とにかく何でもいいー』


『了解!』


 たいちっちは昔から不思議な人だった。

 顔は格好いいのに嫌味臭くない性格だし、人当たりもいい。

 シンプルに言えば『性格がいい』んだと思う。

 それ故かどうかは分からないけど。

 色々なところに変な関係を築いていて、様々な情報が集まってくる。


 ……それも計算なのかもしれないけど。


 長い付き合いだけどお互いに良く分からない。

 それが吉岡太一という男だった。


 ポキポキ、とLINEの通知音。


『3人はよく ーーーというクラブによく行っているみたい』


 なるほど。

 クラブかぁ……。

 実は苦手なんだよなぁ。


 ってか、この短時間で一体誰に聞いたのかなぁ。

 本当に謎。


 クラブってことは、多分お酒も絡んでくるから……。



 やっぱり狙い目はそこかな。




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