友好戦略その4
「お風呂は気持ちよかったかい?すっかり夜も老けちゃったね」
「そしたら眠ろうか。僕が深海よりも深い睡眠にいざなってあげるよ」
「君が睡眠導入に使っているASMR作品を僕も聴いてみたんだ、それらを参考に君を癒してあげるよ」
「なんでそれを知っているのかって?それは君のスマホの履歴を見たからに決まっているじゃない」
「そんな怒らないでよ〜。むしろ最近君が僕に似ている女の子のエロ画像をいくつも保存していることに、僕が目をつぶっている事実に感謝して欲しいね」
「そうだ、僕の際どい自撮りも追加しておいたから、後で堪能するといいよ」
「くれぐれもSNSとかにあげちゃだめだよ。見ていいのは君だけなんだから」
「そんなことよりも君が聴いている作品では耳掻きがよく行われているね。じゃあ、まずはそれをしてみようか」
「僕が君の耳を掃除してあげようというんだ。横になってくれよ」
「さあ僕の膝に君の頭を載せて。君は幸運だね、深海のお姫様の膝枕を堪能できるんだよ」
「うん、そう、右耳を上に向けて。この竹製の耳掻きが唸るよ」
「先ずは耳の周りの汚れを取っていくよ〜。ほらカリカリッと」
「人間の耳は不思議な形をしているよね、僕らの耳は穴が空いているだけだもん。こんなひらひらしたものはサメにはないよ。なんか美味しそうだね〜、食べちゃいたい。はむっ、ふふっ冗談だよ」
「中も掃除していくよ〜、ほらカリカリ」
「この姿になってから君の真似をして耳掻きするようになったけれど、存外気持ちの良いものだよね」
「それに他人の耳を掃除するのもまた楽しいね、癖になりそう。今度僕の耳でもやらせてあげようか?」
「力加減はどう?痛くない?」
「もっと強く?あんまり強くすると傷ついちゃうけんだけど」
「あ〜そうか、君はMなんだね。痛いくらいが気持ちいいんでしょ」
「僕はSだよ。sharkのSだ」
「そうだ、耳の奥をやるからってわけではないけれど奥の手を使ってあげるよ」
「おにいちゃん、きもちいい?おにいちゃんがきもちよければ、ライカもとってもうれしいんだよ〜」
「ふふっ、こういうのを萌えというんだろう?癒されたかい?」
「大体耳垢は取れたかな。そしたら耳掻きの後ろに付いているこのプランクトンみたいなもの、梵天っていうのかい?これで細かいのを取っていくよ」
「こしょこしょこしょ、うん取れた〜」
「ふぅ〜、敏感だね、可愛い。ほらふぅ〜、これで右耳は完了だよ」
「次は左耳をやるよ、ほらごろーんってひっくり返って」
「はい、よくできました。じゃあ始めるよ」
「また外側からカリカリ」
「丁寧に〜絶妙な力加減で〜。あっ、気持ちいいのかい?顔が緩んでいるよ」
「次は中も〜カリカリ」
「考えてみれば、僕が手元を誤れば君の脳みそを引き出せるかもしれない。生殺与奪の権限を僕が握っているわけだ。どう恐い?怖い?」
「僕はそんな事しないって?信用されてるなぁ、なんかむず痒いや」
「確かにラブカは人を襲うようなサメではないけれど」
「そもそもサメの中でも凶暴なのはごく一部なんだよ?」
「人を積極的に襲うのはホホジロザメ、オオメジロザメ、イタチザメくらいのものなんだ」
「サメは種類によって色々なものを食べるとさっき言ったよね」
「小魚とか貝類とか、ダルマザメなんかは独特だよ。なんと彼らは生きている魚の一部を食べるんだ」
「ダルマザメは大型の魚に吸い付いて、体を固定する。そうしたらその歯をぐるりと回して魚の身を抉り取る。だから被害にあった魚の体には丸くくり抜かれた跡ができるんだ。中々に面白い生態をしているよね」
「プランクトンを主食にしているサメもいるんだ。世界で最大の大きさを誇るジンベイザメ、口の大きなウバザメ、最近になって目撃例が増えてきたメガマウスザメなんかは、海の中を漂う小さな生き物を濾しとって食べているんだ」
「おとなしいサメの方が多数派なんだよ。でも人間のイメージでは、サメは凶暴な生き物みたいだね」
「急に真面目な話になっちゃったかな。でも僕の使命は人類との共存だからね。こういった情報は広めなきゃならないんだ」
「言ってる間に耳の中も終わったね。じゃあ梵天でふわふわ」
「くすぐったくはないかな?大丈夫?」
「はいok、綺麗になった。ふぅ〜。もう一度ふぅ〜」
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