世界を救おう日を浴びるために
パ・ラー・アブラハティ
アイツがいないから俺が。
アイツが消えてから何年が経っただろうか。平和が訪れて、青空には今日も鳥が歌を歌って雲を泳いでいる。
こうやって野原に寝転がって、俺が平和を謳歌できるようになったのは、勇者ラーメンのおかげでアイツは唯一無二の親友だった。突然に村にやってきたと思えば、魔王チャーハンの手から世界を救うために旅をしていると言うんだから、当時はそれはとても驚いた。町の方は魔王チャーハンの侵攻の手がまだ迫っていなかったから平和ボケしていて、辺鄙な村に住んでいた俺たちは魔王チャーハンの手がすぐそこにあって毎日怯えて過ごしていた。
そんな時にアイツが現れて、村の人はそれはとてもとても感謝した。風になびく淡い黄色の髪は太陽のように見えて、本当に神様のようすら思えた。
最初は勇者ということもあって、俺は一線を引いて壁を作っていたけど、同年代ということもあって段々と壁が消えていて打ち解けていた。アイツが、この村に滞在していたのは三週間と
短い時間だったけど仲が良くなるには充分だった。剣の使い方、魔法の使い方、色々と教えてもらった。
そういえば、アイツの仲間からも色々と教えてもらった。傷にいい薬草や力が出やすい体勢など、気さくなパーティメンバーだったのを鮮明に覚えている。村を出る時にまた会おうと約束を交わしたが果たされることは無かった。アイツは魔王との戦いで命を落として、またこの村にやってくることは無かった。
訃報を聞いた俺は勇者であるアイツが死ぬはずがないと信じていなかったけど、二週間後にアイツの遺品が手元に届いて信じざるを得なくなって涙をボロボロと零して、一日中泣いて目を腫らした。
だから、こうやって平和が続いてるのは本当に本当に当たり前なんかじゃなくて偶然起こったことなのだ。
そろそろ帰ろうと思った時、空の異変に俺は気付いた。この異変と違和感は何年前かに見た覚えがある。
「……空が黒くなっていく。これは」
これは魔王がまだいた時の空模様。でも、魔王チャーハンはアイツが倒したはず。拭いきれない違和感と異変は真実を覆い隠そうとするけど、空は克明に魔王チャーハンが復活したことを表していた。
アイツがいないのに、どうやってこの世界を救うんだよ。どうやってまたこの世界に光を戻すと言うんだ。
『……俺はさ、成り行きで勇者になったけど世界に光と平和を取り戻せるならそれでいいんだ』
震える心にアイツの言葉が蘇る。臆病な俺を正すように言葉が蘇る。
「そうだよな、そうだよな。臆病になってたら良くないよな。お前がいないなら、俺が変わりに世界を救ってやる。勇者でもない、俺がやってやるよ」
こうして、俺は魔王チャーハンを倒すことを決意した。
行こう、アイツがいないなら俺が。また世界に日を浴びさせるために。
世界を救おう日を浴びるために パ・ラー・アブラハティ @ra-yu482
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