◆息継ぎを/忘れるくらい/引き込まれ/夢見た後に/夢を見る


息継ぎを

忘れるくらい

引き込まれ

夢見た後に

夢を見る



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「良い短歌だね」

「え?」

 冬君に声をかけられて、かぁっと頬が熱くなる。別に冬君に見られて恥ずかしいことはない。ただ、記憶をたどり、出会った時から。忘れられない、あの時のことを思い返して。


(――どの瞬間もかけがえがない)

 そう思う。


 文芸部で、俳句・短歌コンテストに出そうと決めたのが、つい先週のこと。

 どうせなら、と。

 みんなの歌を集めて、歌集にしようという話になり。


 自分の短歌を改めて、読み上げてみれば、全部、冬君で溢れている。


(ずるいなぁ)


 短歌を丁寧に読む冬君を見ながら思う。

 夢を見ていた。

 自分には決して届かない、そんな夢だって。ずっとそう思っていた。

 それなのに。

 夢を見せてくれた後で。

 さらに、もっとさっきの夢を、冬君は見せてくれる。


 今、この瞬間もまるで夢を見ているように、幸せでいっぱいで。

 息を忘れそうなくらいに。


 今度は私の方が、

 息継ぎなんかできないくらい

 あなたを幸せにしたいって、そう思うから。

 





息継ぎを

忘れるくらい

引き込まれ

夢見た後に

夢を見る





 自分が書いた短歌を指でなぞりながら、言霊に溢れだす感情をこめて。重いって、自分でも思うけれど。


 だって仕方がない。

 この気持ち、隠せすことなんかできないから――。

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