豆を挽く/焼き菓子作る/そんな日々/君がいるから/呼吸ができる
豆を挽く
焼き菓子 作る
そんな日々
君がいるから
呼吸ができる
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「えっと……。冷めないうちに飲んでもらえ、たら……」
不安そうに私を見る。
私は小さく笑んで、コーヒーカップに口をつけた。
***
「おいしい――」
コーヒーは苦手だった。苦味は現実の辛さをイメージさせるから。優しくない言葉や刺々しい拒絶を彷彿させるから。どうして、こんな苦いものを大人は好むんだろう。そう思っていた。
でもこのカフェオレは――。
コーヒーの香りを強く感じるのに、苦味も渋みも少なくて。でも砂糖の仄かな甘味を引き立たせるコーヒーの存在感が確かにあった。
寄り添ってくれて。
甘えさせてくれて。
否定をしない。
私を肯定してくれる。
しっかりと見ていてくれる。
でも、私の背中を押してくれる。勇気を私に持たせてくれる。
まるで、このカフェオレは冬君そのもの、そう思った。
描かれた猫は、まるで幻のように渦を巻いて、今はミルクのなかに溶けてしまったけれど。
でも、飲んだ瞬間――体中が暖かくなって。
冬君に満たされていく。そう感じてしまう。
お世辞でもない。ウソでもない。ありのままの気持ちが、無意識に私の口から紡がれていた。
「冬君――」
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