第6話 小説家の反芻

いつの間にか日が昇り始めていた。私は昨日、帰宅してすぐ眠ってしまったのだ。2つ上の彼、それからさゆりという親友の存在。親友の話はまだ詳しく聞けていないが、彼女から聞いた話はどれもが嘘みたいな内容だった。しかし、小説のネタにはなりそうだった。複雑で曖昧な恋というべきか。これまでに描いたことのない話がつくれそうだった。よし、一度ノートに話をまとめよう。昨日は寝てしまったが、その分頭が冴えているのでなんとか作業に着手できそうだ。机上にあった万年筆を握り、新しいページを開いた。



・桐野葵…主人公、大恋愛を経験した様子。パッチリ二重の美人。すらっとした身長

・2つ上の彼…なんとなくずっと気になる存在、出会っては別れを繰り返す。大恋愛の相手?

・さゆり…親友、後の恋のライバルとなる?



まとめと言っても話を聞いて、登場人物たちのイメージを膨らませやすいようにするだけのメモ書きだ。「まとめる」という言い方はたいそうに聞こえるかもしれないが、小説家の私にとってはそれほど重要な作業なのだ。この作業を怠ってしまえば、たちまちストーリーが滅茶苦茶になってしまう。この作業はただの文字に命を吹き込む前作業と思って取り組んでいた。


しかし、桐野葵という女性は非常に不思議な雰囲気を纏っている。美人でしっかりしてるそうに見えるが、どこかふわふわとして掴みどころのない感じがでていた。昨日の話をまとめながら、彼女の顔を思い浮かべた。やはり目を惹く美人だ。一重でのっぺりとした顔の私と並ぶと、一層彼女の魅力が引き立つように思えた。今はそんなことを考えても仕方がない。それよりも、彼女の話の続きが気になってまたすぐに会いたい衝動に駆られ、すぐにメールを送った。



桐野葵様

昨日はありがとうございました。早速ですが次の週末お時間をいただきたいと考えているのですが、ご都合いかがでしょうか。お返事お待ちしております。


佐藤


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