第5話 親友

さゆりは私の親友でした。小学校で出会ってから高校までずっと同じ学校に通っていました。でも、1度も同じクラスになったことはありません。なぜ親友なのかって?

登下校の班が同じだったんです。隣同士の家に住んでいた私たちは自然と仲良くなりました。母親たちも仲が良かったし、私たちはまるで双子の姉妹のような関係でした。よくおそろいの格好で出かけたし、何をするにも一緒でした。でも一緒が良くなかったのだと思います。好きな人まで同じでしたから。そう気づいたのは中学生の時です。私たちは良く恋バナをしていました。当時彼女には彼氏がいて、紹介してくれました。2つ上の聡先輩です。顔は知っていましたが、何より2つも上だったので関わったとはありませんでした。彼女は美人でしたからよく上の学年の男子の間で噂になっていました。聡先輩も誰かから彼女の噂を聞いてアタックしてきたそうです。彼もなかなかの男前でしたから女子の先輩の反感を買っていました。が、彼女は微塵も気にせず、毅然とした態度でいました。本当に同い年なのかと疑うくらいその時はかっこよく見えました。私は恋バナ好きでしたから、当然のように彼女から彼氏の話を繰り返し聞きました。でも彼女は本気で好きではなさそうでした。どこか空疎というか、見た目がかっこいいからという理由で付き合ったような雰囲気があったのです。私は気になって聞いてしまいました。本当に先輩のこと好きなの?他に誰か好きな人がいるんじゃないの?と。彼女は嫌いではないけどだけ言いました。やっぱり他にいるんだと思いました。直感です。何年も彼女と一緒にいた私だからこそ、私にしかない感覚なのでそこは説明できません。とにかく他に好きな人がいることを確信しました。でも一体誰なのか見当もつきませんでした。彼女は入学してからずっと先輩と付き合っていましたから、他に好きな人がいるなんて考えたこともありません。どうして好きな人に気づけたのか。それは今度お会いしたときにお話しします。


気づけば3時間ほどが経ち、午後6時を過ぎようとしていた。私は長い時間ありがとうございましたと礼を言い、これまでの話を整理しようとしたがペンが進まなかった。なんだか長い時間異世界に行っていたような感覚に陥り、このまま眠ってしまいたい願望に駆られた。

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