テスト

@shakora

第1話

すっかり暗くなった部屋の中で、意識して静かに息を吐いた。

カーテンを引かなかった窓の外から、行き交う車の明かりが飛び込み、天井を踊って消えていく。


それを少しの間見つめて、私は身体を起こす。

帰る前のことを思い出す。


君は、甘い女の子が好きなんだっけ。


明日着ていく服を今のうちに選ぶ。

淡いピンク。クリーム色。差し色は黒、それともミントグリーン?

そんなことを考えながら、鏡の前で色んな服を持ち上げて見てみる。


「…………」


君に可愛いと思ってもらいたいから。


「…………」


君の好きな女の子になりたいから。

だから、すぐに諦める弱いあの日の自分とばいばいしたの。

君のものになりたいから、君の口を私で塞ぎたいから。

私の身体も、心も全部あげる。

でもね。


「──?」


私がどれだけ好きになっても、きっと君はまだ私に触れられないのだろうけど。


それでも、私は君の隣にいたいと思うんだ。


だから君の好きを教えて欲しいな。

甘い夢を見せて欲しいの。




今日は窓から星が見える。

月のない夜は、星が何にも邪魔されない。


大好きって言った時の君の顔は可愛かったよ。

君がまだ、あの子のことが好きなのは知ってるの。

私が好きになってきてるのも。


だから、顔を近づけると困ったような照れたような顔をしたんだもんね?


けど、私はもう諦めないの。

君が好きなあの子に君の隣を譲らないために、私は柔い私を捨てたのよ。


君の、君だけの私をもう少し見て欲しいの。


明日は少しだけ、距離を置いてみようかな?

そしたら君は、困った顔をしてくれるかな?

そうしたら、もっと君に近づくことができるの。

ふふっ。

楽しみだなぁ。

ねぇ、早く気付いてくれないかな。

私の気持ち。


甘い夢を見たいな。





今日は曇りで何も見えない夜だ。

車も少なくて天井は暗いまま。


君は私が離れてもいつもの所で見てるだけ。

君の隣にはあの子。


君はあの子にも、近寄れない。

けれど、それを横目で見る私も変わらない。

それは私に男が話しかけてきても変わらなかったね。

あーあ。

本当につまらない。

私はこんなこと望んでいないのに。

君は、どうしていつまでもそこにいるのかな? ねぇ、教えてくれないかしら。

ねぇ、ねぇ、ねぇ。

君が望むなら、私はいくらだって待てるわ。

だから


明日は大人(ビターキュート)な格好をしてみようか。

甘くなくていいの。

君のためだけに、私が変わるから。

そうして今日も一日が終わった。

明日は雨らしい。

窓の外では、空が泣いていた。

「──」

声にならない声で、名前を呼ぶ。

何度も呼んだその名前を口にするだけで、心臓

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