ポチの四話 スーパーシュートを決めたよ
しとしとしと。
しとしとしと。
「今日は雨だねー。」
「そうだねー」
「振ってるねー」
今日は生憎の雨降りなんだ。
ミッケちゃんとリルムちゃんと一緒に、教室の窓から外を眺めているんだよ。
ポチは雨も好きだけど、やっぱり晴れが良いなあ。
「そういえば、前にポチちゃん水たまりの中にジャンプしておばさんに怒られていたよね」
「お洋服が泥だられ」
「あはは、あれはポチもやりすぎちゃったよ。暫くおやつ抜きになっちゃったんだよ」
ポチは犬っこだからなのか、水たまりを見ると遊びたくなっちゃうんだよね。
いやあ、あの時は大失敗したよ。
お洋服びちょびちょにして、おばちゃんに怒られちゃったんだよ。
あの時のおばちゃんは、ポチだけでなくりっちゃんとおじちゃんが震えあがる程怖かったんだよ。
がらがらがら。
「皆さん席について下さい」
おっと、花先生が教室に入ってきたぞ。
席に着かないと。
今日はどんな一日になるかな?
「先生、おはようございます」
「はい、皆さんおはようございます」
ミッケちゃんの号令で朝礼をして、席に座ります。
「今日は雨ですので、体育は体育館で行います。着替えたら、体育館に行って下さい」
「花せんせー、ごりお先生は復活したんですか?」
「復活はしたんですけど、うーん、何というか実際に見てもらった方が良いですね」
「「「???」」」
なんだろう?
男の子の質問に、花先生が困ったように返答したよ。
ごりお先生は、ミミ先生に振られたショックで学校を休んでいたはずだけどなあ。
うーん、一体ごりお先生はどうなっちゃったんだろうか?
体育の授業の時に、ごりお先生がどうなったか見てみよう。
そして、給食前の四時間目になったよ。
今日は給食を食べたら下校だから、ポチ体育は張り切っちゃうよ。
でも、それ以上にごりお先生がどうなったか気になるなあ。
「み、みなさん、こ、こん、にちわ」
「「「……」」」
おお、体育館にはいつものゴリゴリマッチョじゃなくてひょろひょろになったごりお先生がいたんだよ。
もうね、皆びっくりして固まっちゃったんだよ。
男の子はごりお先生の事をミミ先生に振られたとからかうつもりでいたんだけど、もうそれどころじゃなくなっちゃったんだよ。
「ご、ごりお先生、大丈夫ですか?」
「ははは、大丈夫だよ。三日間ご飯を食べていないだけだからね」
学級委員長のミッケちゃんがごりお先生に体調を聞いているけど、明らかに失恋のショックでご飯食べられなかったんだよね。
それでも学校に来たから、ごりお先生は偉いと思うよ。
「はい、今日はフットサルを行います。コートは三面作りましょう」
「「「はーい」」」
やったー!
ポチの大好きな球技だよ。
しかも、サッカーは大得意なんだ。
ふふふ、今日の体育で一番輝くのはポチなんだよ。
皆で準備体操をして、フットサルのゴールを準備するよ。
「ポチちゃん、よろしくね」
「よろしく」
「ミッケちゃん、リルムちゃん、頑張ろうね!」
しかもミッケちゃんとリルムちゃんも一緒だから、もうこれは勝ったのも当然だよ。
ミッケちゃんは運動神経抜群だし、リルムちゃんは冷静にパスを出せるんだよ。
ここで、更にポチのスーパーシュートが炸裂するんだ!
そして、まさかの助っ人が現れたんだよ。
「あれ? ミミ先生だ」
「本当だ、ミミ先生だよ」
男の子がざわざわとしているけど、体育館の入り口を見たら養護のミミ先生が入ってきたんだよ。
しかも、何故かジャージを着ているんだよ。
ミミ先生はスタイル抜群だから、ジャージを着てもお胸とお尻が凄い事になっているよ。
「みみみ、ミミ先生。何で体育館にいるんですか?」
「ちょっと様子を見に来たんですよ。今、学校の中で一番の重病人はごりお先生ですからね」
「はははは、はい! ありがとうございます!」
おお、ごりお先生が一瞬にして復活したぞ。
ミミ先生の効果は大きいぞ。
「それに、丁度保健室に業者が入って保健室が使えないので、体育館のおトイレのチェックにも来たんですよ」
「そうだったんですね。ははは、ご心配をおかけしました」
ごりお先生は、謎のマッスルポーズをしながらムキムキの筋肉をアピールしているよ。
ミミ先生はニコニコしているけど、何だかとっても暑苦しいなあ。
「試合開始です」
おっと、試合が始まったよ。
ミッケちゃんがゴールキーパーで、リルムちゃんがパスを出してポチが決めるんだよ。
「へい、パス」
「シュート!」
「残念だね、私が全部止めちゃうよ」
おお、ミッケちゃんカッコいい!
男の子のシュートを、いとも簡単に止めちゃったよ。
やっぱりミッケちゃんは。運動神経抜群だね。
「リルムちゃん!」
「止めるぞ」
「ほっと、ポチちゃん、えい」
おっと、ミッケちゃんがリルムちゃんにスローインして、リルムちゃんが華麗なステップで男の子をかわしてパスをくれたよ。
ポチ、いきなり得点を決める大チャンスだよ!
しゅん。
「えーい、ポチスーパーシュート!」
ドゴン!
「「あっ」」
「あー、外れた!」
うう、ポチのスーパーなシュートは、ポストを直撃して後ろにそれちゃったよ。
きーん。
「はぐわぁ!」
「あー! ボールがごりお先生に当たっちゃった!」
大変大変!
ポチのスーパーなシュートが、ごりお先生の股間に当たっちゃった。
ごりお先生、ミミ先生とお話していて全く気が付かなかったよ。
ポチも皆も、急いでごりお先生の所に駆けつけたんだ。
「あわわわ、ごりお先生ごめんなさーい! 大丈夫?」
「ウゴゴゴ……」
ごりお先生は、真っ青な顔をしながら股間を押さえているよ。
更に、ポチがごりお先生に謝った事にも気がついていないんだよ。
これは非常事態だよ。
「あらら、体育の授業中に先生がよそ見をしては駄目なんですよ」
ひょい。
「「「おおー!」」」
ここで、何とミミ先生がゴリゴリマッチョのごりお先生を軽々とお姫様抱っこしたんだよ。
もうね、ポチだけでなく男の子も女の子もびっくりしたんだよ。
「先生がごりお先生を保健室に連れていくわね。花先生を呼んでくるから、皆も怪我をしない様にね」
「「「はーい」」」
そして、ミミ先生は颯爽と保健室に向かっていったんだ。
と、男の子がミミ先生に質問しちゃった。
「ミミ先生、どうしてごりお先生からのデート断ったの?」
「あれ、デートの申し込みだったのかしら? 一緒にジムに行きませんかっていわれたのよ」
「「「えー!」」」
「しかもその日は、大学の同期で飲む事になっていたのよ」
ごりお先生、何でデートに行くのにジムに誘ったんですか?
クラスの全員がびっくりしていたよ。
うーん、これじゃあごりお先生の恋が実るのは無理だよね。
みんな、無言でごりお先生をお姫様抱っこしているミミ先生を見送ったよ。
「はーい、じゃあ、続きやろー」
「「「おー!」」」
ミッケちゃんの声で、みんな気持ちを入れ替えたよ。
ポチは、もっと凄いシュートをゴールに突き刺すのだ!
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