【練習】テーマ:死神、サイバーパンク【掌編小説】
沙路 涼
第1話
「サイバーパンク」
「死神」
錆びた鉄パイプに掴まり滑るようにして朽ちたサイロを下に下る。「この仕事が終われば俺もやっと楽になれる……しかしこれはまるで地獄の釜の中のようだ」途中パイプが切れていたので上から伸びたケーブルに鎌を巻き付けて降りていく。そこが見えてきたと同時に目的のものもいた。
「ここに死にぞこないがいると聞いてきたんだが、なんだお前……」「やあやあ、これは死神さん。ここに話せる人が来たのはもう何百年振りかな……」「人でもない生き物でもないお前に用はない。冥府にも行けずここで朽ちろ」「そんなこと言わないでくださいよ。僕だって朽ちたいんです。そして今更ながらですけど、僕はもう十分生きました。もう僕しか人間はいないのでしょう?なら望んで得た不老不死、もういらないんですよ。この世は生きていくのは辛すぎます。つまりは死にたいのです」「死にたい?ハハッ、お前はそんな成りで生きているのか?」動力ケーブルの先には背中にケーブルが刺さったそれがいた。まるで人形のようだ。手足は朽ちたのかもうすでにない。「すばらしいでしょう?僕は不老不死を得るために機械に体を置き換えてきたんです!朽ちるたびに置き換えるので今ではもう生身の場所はありませんが意識もすべて僕なんです!これを生きていると言わずなんというのでしょう!」「生きている?ふざけるんじゃない!生身の場所がなければ人形じゃないか!」「失礼な!謝罪を要求します!」「おこがましいな人形。お前の人間の魂はもうすでにここには無いようだぞ。すべてに死の救済を与えている俺が断言してもいい」「ならなぜあなたはここに来たのですか?私に救済を与えに来たのではないのですか?」「ここに最後の魂があることを感じたから来たのだ。それが生を冒涜し業だけを重ねた醜く魂とはもう呼べないものとその器の人形があっただけだ。最後の人間がいないならもう俺の仕事もこれで終わりだ。」死神の足元がすすけていき体が浮遊感に包まれ宙を浮き始めた。「まって、まってくれぇえええもう一人はいやなんだあああ!つれてってくれええ」醜い化け物はケーブルを引きちぎりながらこちらへ向かって飛び出そうと暴れ始める。ちぎれて動力源の断たれた人形は地面を転がる。「コロシテ……コロ……」眼の光が消える。「ハハッ、これが俺の最後の仕事だとはな……。こいつを探して1000年……長かったな」ただの物を器に使ってしっまった彼の魂は器から離れることができず冥府には行けない。悠久の時をこの現実という地獄で過ごすことになるのだ。「救済を与えられないなら彼にせめて少しでも安らかな眠りを」死神は空に向かって伸びる光の中で祈りをささげた。
【練習】テーマ:死神、サイバーパンク【掌編小説】 沙路 涼 @sharo0826
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