4 ミルミルの過去Ⅲ 


ティルがポケットから出した金額は今まで見たことのないような膨大な額だった。

ティルが急いで言葉を継ぐ。


「このお金、全部あげるからっ!この人をティルにちょうだい!!」


長老は他の村人たちとしばしの間話し合った。

そして、一歩前に出て言った。


「わかった。その金はおいてもらおう。そして、こいつを好きにすると良い。」


長老はティルの手からお金をひったくるようにしてとってから私の服をつかみ投げ出すように処刑台から降ろされる。


「ありがと!」


ティルはさぞ嬉しそうに言って私の手をつかんで走り出した。






しばらく走ってティルが立ち止まった。


……私はまだ何も行動できなかった。

……怖かった。


ティルが一回転した。すると少年だったはずが緑色の小鳥の姿に変わったのだ。


私はまじまじとティルを見る。

ティルはくすりと笑い言った。


「これ、ティルの魔法!……君の名前は?」

「……ミルミル。あの、……。」

「ミルミルはなんで捕まっていたの?」

「……悪いことしちゃったから……。」


ティルはふんふんと頷いた。


「……なんで私を連れてきてくれたの?」

「ルベリーナ……ティルのご主人様からのお願いなの!……ティルについてきてくれる?」



殺されるかもしれない。でも、さっきだって殺されそうだった。

……一歩前に出てみよう。


「うん。」


私は小さく頷いてティルについて行った。


しばらく歩いて立派なお城についた。


「入って。」


私は言われるがままにお城に入った。

見たことのないようなキラキラに目が痛くなる。


ティルは小さな部屋に私を案内する。

そこにはたくさんの地図や資料があった。


「ミルミル、君にお願いしたいことがあって……この地図や土地をすべて覚えて『案内人』になってほしいんだよね。もちろん三食昼寝付き!!」


急なお願いに私は戸惑う。

でも、やってみよう。そう心に決めた。

私はティルの顔を見て深く頷いて言った。


「……わかった。……ありがと。」


ティルは微笑み部屋から出て言った。


お城にいた人はみんな優しくしてくれた。






部屋にこもって約二年。

ティルに呼ばれた。


知らない少年が隣にいた。

そして、しばらくしてから大きなローブを着て美しいロングヘアの女性ールベリーナ様とティルが来た。



……そこから私の世界は少しずつ動き出した。






初めて人の役に立てた。

初めて私を必要としてくれる人がいた。

初めて人に「ありがとう。」を言ってもらった。

初めて私を仲間だと言ってくれた。




あの時、人間になりたいと思ったことを後悔した。

でも、今はあまり後悔していない。


……もちろん村の人に迷惑はかけているけど、村にかけてしまった呪いは私が解く。


……だって、私はもう一人じゃないから……。


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