2 ミルミルの過去Ⅰ ※ミルミル視点です
私はルベリーナ様の気遣いに胸が痛くなる。
自分のことを話すのは苦手だ。
……それに、過去のことを話したら引かれるかもしれない。
~ミルミルの過去
「おとーさん!おとーさん!!」
私ーミルミルはお父さんを懸命に呼ぶ。
お父さんは木の陰からゆっくりと出てきた。
「どうした?ミルミル。そんなに大きな声を出すと人間につかまるぞ?」
そう。私たちは喋れる狐だ。人間はとても恐れられていた。
でも、私は人間についてとても興味があった。
会ってみたい。話してみたい。
「おとーさん。今日って何があるの?」
「ああ、今日は一年に一度の祭りだ。」
「あ!お祭りかあ~!!楽しみ!」
「そうだな……。……静かにっ!」
急にお父さんは血相を変えて小さな声で言った。
「どうしたの?」
「……人間だ。」
お父さんの心臓の音が聞こえる。……お父さんは怖いんだ。
逆に私の心臓はわくわくでトクトクと大きく心音が聞こえる。
人間は私たちの前を通り過ぎた。
綺麗な髪の毛、しっかり立っている2つの足、衣服を身にまとっている様子。
私は初めて見た人間に恐ろしいほどの憧れを覚えた。
私も2足で歩きたい。美しい服を着たい。
「おとーさん!私、将来人間になる!!」
「……!何を馬鹿なこと言っているんだ!?そんな考えは今すぐ捨てろっ!」
急にお父さんは噴火したように怒鳴った。
私はびっくりして、ただ静かに頷いた。
……いいもん。お父さんが認めてくれなくても私は人間になるんだもん。
そうしてむかえたお祭り。
たくさんの狐が集まった。
そして、3歳になった狐たちが中央に集まる。私も3歳だから一緒に集まる。
主催者の長老狐がビー玉のようなものを次々と
「この玉は必ず3歳を迎えたキミたちの願いをかなえてくれる。さあ、願い事を言ってごらん。」
すると一番端っこにいた狐が声を張っていった。
「ずっと幸せでいたい!」
するとビー玉があたたかく光り、割れた。
これが願いがかなった証拠なんっだって。
他の子たちも願いを口にした。
「食事に困んない生活をしたい!」
「ママとずっといたい!」
みんなのビー玉がパリンパリンと割れていく。
よ~し私も!
「人間になりたい!!」
私のビー玉も割れた!やった願いが叶う!!
でも、大人たちの空気がすっと冷めた気がする。
ひそひそと軽蔑するような言葉が聞こえる。
なんでみんなは、そんなに人間を嫌うのだろう……。
「え、え~それでは皆さん引き続きこのお祭りを楽しんでください。」
気を取り直したように長老は言って、元の空気に戻った。
……周りの目は少しきつかったけどね……。
次の日。
バタバタとした足音で目が覚めた。
なんだろう……体中痛い。
体を伸ばすと5本の指が見えた。人間のような……。
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