6 盗賊との戦い
「ギル!大丈夫そう!?」
私はたくさんの人込みの中からギルに声をかける。
ギルは私の方を向き小さく笑って言った。
「大丈夫、だと思います。すみません。俺の不注意で、盗賊と戦うと勘違いされたみたいで……。」
「ううん。気にしないで!……頑張ってね!」
ギルは力強く頷いた。
すると、ライアートとギルの間に審判?が入ってきて、声を張り上げた。
「それでは、二人のステータスを発表する。モニターに注目。」
その声に観客は「フゥー!」と、煽りを入れる。
私はモニターを見る。
【ギル・勇者】
体力:2200、攻撃力:3000、素早さ:1200、スキル:風雪、風球
【ライアート・盗賊】
体力:1700、攻撃力:450、素早さ:2000、スキル:
ギルの方が全体的に高いけど、素早さはライアートの方が早い。……。
「やばい……。圧倒的に素早い方が有利なのに……。」
ティルの呆然とした声が聞こえる。
じわりと汗がにじみ出てくる。……大丈夫、大丈夫。
「ルールを確認する。時間は無制限、武器は何を使っても良し。相手が死ぬか、降参したら終了だ。それでは、スタート!!」
わっと会場が盛り上がる。
「どこの勇者かは知らんけど、容赦はしないっスよ?」
「俺も、手加減はするつもりはない。全力でやる。」
ビリビリとした空気が二人の間に流れる。
二人は睨み合い、同時に動き出した。
「……っ!」
やはり素早さが早いライアートがすぐに短剣でギルに攻撃を仕掛ける。
ギルは表情を歪め、苦しそうに防御する。
ギルの胸元から痛々しい鮮血が飛び散る。
観客は興奮したように歓声を上げる。
私は思わず目を伏せる。
ギルは急いでライアートと距離をとった。
そして、ゆっくりと大剣を構えた。
勢いをつけてギルは走り出す。
そして、ライアートの肩に勢いよく剣を下ろす。
ライアートは逃げ遅れてダメージを受ける。
肩から大量の血が飛び出す。
観客は嘆きのような悲鳴を上げた。
今の段階でギルの体力は1650。ライアートは700だ。
今の段階では圧倒的にギルの方が有利だけど……。
すると顔色を変えたライアートは短剣に魔力を込める。
「やばいっ!」
肩からティルの悲鳴交じりの声が聞こえた。
「今からライアート、スキル使うつもりだよ!!
つまり、「攻撃を受けて体力が0になる=死ぬ」ってこと!?
ど、どうするの!?
そんな私たちを気にせずライアートはスキルを発動した。
ギルの体に短剣が1回、2回、3回と切り刻んでいく。
ギルの体力は、300。
ギルは肩で大きく息をする。
服や地面はギルの血で、赤く染まっていた。
観客は狂ったように叫んで、手をたたいて、喜んでいた。
唇をかむギルをただただライアートは冷たい目で見ていた。
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