3 森ノ姫、登場


「怖いよぉ。」


弱々しいティルの声が頭上から聞こえてくる。

すると、ギルは強がるように声を張り上げた。


「こ、この静かな空気が余計怖くしているんだな。よし、俺に任せろ。」


お!何をしてくれるのかな?


「……何をする気?」

「俺が、歌ってやる!!」


ギルの息を大きく吸い込む音が聞こえる。

そして、歌いだした。

うろ覚えの歌詞に、バラバラなリズム、耳が痛くなる大音量。


ま さ か の 音 痴 だ っ た と は … 


ま、まあ確かに辺りは明るくなったけどね!?

空気は急に冷めた気がするよ!?

頭上から「うるさい」っていう小鳥の声が聞こえたのは、きっと気のせいだよね?


ギルは気持ちよくなり、もう一曲歌いだした。すると、



「そこの若者、うるさいですよ。」


空気を裂くような、凛とした女性の声が響いた。

……でも暗すぎてどこにいるかは分からない……。


「どこ?」


すると、手を二回たたく音が聞こえた。

刹那、目の前はあたたかな光があふれだした。


まぶしい……。

私はゆっくりと目を開ける。

すると、そこにいたのはピンク色のドレスを着て、ウサギを抱いている10代くらいの少女がいた。

ティルが呆然としたようにつぶやいた。


「キミは、森ノ姫……?」

「ええ、そうですわ。わたくしは森ノ姫、モーナですわ。……みなさん、お困りのようですわね。」


……!!「ですわ」って言った!本物のお姫様だ!!


「……森ノ姫って?」

「森ノ姫ってね、なんか森の守護神的な人のことだよ~。」

「……そう。」


コホンと小さくモーナの咳払いが聞こえる。


「あなたたちは今、道に迷っているのですよね?……わたくしが助けてあげても良いわよ?」


私たちの顔がパッと輝いた。


「ただし、」


厳しい声が言葉を継ぐ。


「命令よ。わたくしが道を案内する代わり、わたくしをあなたたちの仲間にしなさい。」


……私は言葉に詰まる。


「キミは、何かできるの?」


ティルが困った声で質問する。

するとモーナは誇らしげに言った。


「ええ、もちろん。わたくしは森ノ姫ですよ?回復魔法が大の得意ですの。」


そっか。ここの仲間にまだ回復ヒーラーはいないもんね。

じゃあ……。私はみんなの代表としてお願いした。


「わかったわ。仲間にする代わりに、道を教えてちょうだい。」

「……!もちろんですわ!…あらためて、わたくしはモーナ。以後お見知りおきを。……あと、こちらのウサギは私の使い魔・リュッテルです。」

「あ、じゃあ俺も……。俺はギル。勇者です。」

「……ミルミル。……案内人。」

「ティルはティル。世界最強の魔法使い・ルベリーナの優秀な使い魔だよ!」

「私はルベリーナです。よろしく、モーナ。」


モーナは破顔して、小さく頭を下げた。








【作者の独り言】


モーナの使い魔・リュッテルは喋れないんです。

だからちょっとだけ存在感が薄い……。


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