2 呪いとティルの力


ティルの言葉に私は納得する。

だが、魔法を解除したくても体が言うことを聞かない。


「どうし、よう……。か、らだ……うご、か、な……い。」


するとティルは覚悟を決めたように顔つきを変えていった。


「……非常事態だから、ティルも力を使うね。」


ティルは空中で一回転した。

すると、緑色のフードを深くかぶった中性的な少年があらわれた。

少年ティルは目をぎっしりとつぶり、体中に力を入れる。


すると、私が感じていた苦しさがすっと消えた。息もできる。

でも、代わりにティルが苦しんでいた。


「ルベ、リー…ナ……はや、く。」


私は急いで魔法解除の想像をする。

すぐに力の爆発が起き、天空から降り注ぐ光は途絶えた。


「……っ!……はぁ、はぁ……。」


ティルは荒々しく息をする。

私は急いでティルに駆け寄る。


「ティル!大丈夫!!」

「うん!大丈夫!元気だよ!」


そう言ってティルはまたくるりと一回転して、小鳥の姿に戻った。


「ルベリーナ……怒らないの……?」

「……?なんで?」

「……だって、ティルが『魔法使えば』とか言ったから、そのせいで……。」

「ううん。結局ティルに助けてもらったし、……ありがと。」


私は小さいティルの体をしっかりと抱きしめる。

ティルは小さく笑って、またいつもの得意げな顔つきに戻った。


「ルベリーナも、しっかり時間を気にするんだよ!ドジっ子さんなんだから……!」


私は思わず苦笑する。

でも、わかったことがある。この呪いは危険だ。

私ももう少ししたら死んでいたかもしれない。もしものことを考えたらゾッとする。


「……大丈夫?行こ?」


私は一人で立ち止まっていたら、ミルミルが心配した様子で声をかけてきた。

私は急いで頷いて、ミルミルの後をついていく。



「ここ。」


しばらくしてミルミルは立ち止まり、森の入り口を指さした。

私たちは迷わず森の中に入っていた。


森の中は今まで歩いていた道とは比べ物にならず、薄暗かった。


「右。」


そんな暗闇の中で聞こえるミルミルの声はとても頼もしかった。


また、しばらくミルミルについて言ったら完全に真っ暗で、あたりが何も見えなくなった。


「え。」


誰か分からないが呆然とした声が響く。


「ね、ねえミルミル。次は、どこ?」


平然を取り繕ったティルの声が足元から聞こえる。


「……。わからない。……ここでは魔法、使えない。」

「そ、そんなぁ……。」

「や、やばいじゃん!ティル、死にたくないよ!?」


私は一人、周囲を明るくする魔法を想像してみる。……が、『力』はすぐに分散して魔法が使えない。


「と、とりあえずもと来た道を戻りましょう。」


私は冷静に言った。


でも、歩けば歩くほど闇は濃く、深くなり自分がどこにいるかが分からなくなってきた。




もしかして、完全に迷子?



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