3 冒険の始まり


私はティルが入った部屋に一緒に入る。

そこには一人の15歳くらいの少年と不思議な少女がいた。


「この人たちの職業は『勇者』と『案内人』!!王様にお願いしたの!ね!すごくない?ティル、偉い?」

「すごいよ。ありがとう、ティル。」

「えへへ~。」


すりすりと頭をこすりつけてくれティルを私はそっと撫でる。

そんな私たちを見ながら、勇者の少年は一歩前に出て自己紹介をした。


「は、初めまして、ルベリーナ様。俺はギルで、勇者です。主に戦いをします。よろしくお願いいたします。」


ギルは礼儀正しく頭を下げる。

うん。礼儀正しそう。

……なんか“メルトリア”だった時の幼馴染、シェリックに似ている気がする……。


「……ミルミル。……案内人。よろしく。」


ミルミルは小さく頭を下げた。

ん?この子……耳がある。いや、耳があるのは普通なんだけどキツネの耳……?後キツネの尻尾も……。あと、着物……。神秘的な子だ……。


「うん。ギルもミルミルもよろしくね。私はルベリーナ。頼りにしているよ。」

「ティルは、ティル。ルベリーナの優秀な使い魔だよ。」


二人は安心したように表情を崩した。

ティルは心底楽しそうに言った。


「さあ、楽しい楽しい冒険の始まりだよ!!」








◆◆◆








女性はティーカップをテーブルの上に置いた。

そして、悲しそうに窓の外を見ていた。

その視線の先は、世界最強と称されるルベリーナと、伝説の勇者・マルクの息子であるギル。そして、人狐じんこ——『呪いの一族』の元凶であるミルミル。

その三人だ。


女性はいかにも幸せそうな表情のルベリーナを凝視する。

そして、静かに涙を流す。


「ごめんね。」


静かにつぶやいた声は部屋に響いた。


「幸せ?」


女性は小さく問う。

誰も返してくれない。


女性はベッドに視線を移す。

ベッドには一人の少女が眠っていた。


「あなたが幸せなら、私はどんなにつらくても頑張るわ。せめて、『幸せ』を知ってほしいの。」


女性はもう一度ルベリーナを見る。

ティルと一緒に笑っていた。


女性はもう一度大粒の涙を流した。


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