第4話 孤児院のとある日々
イニスとソリスは最近、瓦礫の撤去作業をしている。
前回は農作業中に空腹に耐えかねて果実を食べてしまい、罰を与えられたので担当を代えられてしまった。
作業中のイニスとソリスへ、呆れている様な口調で話しかけてくる者がいた。
「お前ら、またやられたんだって?」
その孤児は孤児院に長くいる者で、名前はウーヌスといった。
二人よりも大分前に孤児院に収容されている男だ。
ウーヌスはもうすぐ成人となるので、社会勉強や生活の準備期間として教会の外に出ることを許可されている。
成人したら直ぐに、僅かばかりの支援金を渡され一人立ちさせられる。
「アイツの言うことを聞いておけば、ここで痛め付けられることはほぼ無くなるんだぜ。
お前らももっと賢く生きろよ。」
一応助言をしてはいるのだが、どこか人を馬鹿にした様な言い方だった。
イニスはさして気にした様子も無くウーヌスに応える。
「ああ。
貴重な意見をありがとう。
参考にするさ。」
ウーヌスはイニスに念を押す様に口を開く。
「本当に分かってるのか?
お前らの命に関わるんだぜ。」
言い方はともかく、本当に心配している様子だった。
それまで黙っていたリソスが口を挟む。
「心配してくれてありがとう。
二人とも気を付けるよ。」
ウーヌスは、更に何かを言おうとして口を開きかけたが、頭を左右に振り思い直した様子で告げた。
「…。
俺はもうすぐ出ていく。
やっとこの(クソみたいな)場所から解放されるんだ。
お前らも頑張って生き延びろよ。」
ウーヌスは手を振りながら二人の側を離れて行った。
ウーヌスが見えなくなり、しばらくしてからイニスが口を開いた。
「アイツ。
あんな言い方ばっかりしてくるから腹立たしかったけど、思ったより良い奴だったんだな。」
ソリスがウーヌスが歩いて行った方を見て言う。
「もっと普通に話してくれれば良いのに。
分かりづらいね。」
ソリスは、基本的にみんな良い人なのだろうと思った。
だけれども環境が人を変えてしまうのかも知れないとも思った。
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