第3話 とある孤児院で(鬱展開かも)

 閲覧にご注意下さい。

 直接の暴力描写はありませんが、人によっては受け付けないかもしれません。

 






 この物語の舞台は、孤児達が特にひどい扱いをされている孤児院からスタートする。

 物語の中で良く目にする話ではある。

 しかし、当事者である孤児達にとっては、良く聞く話などと言ってはいられない。

 自分達の命に関わってくるからだ。

 その孤児院は、食料不足による栄養失調から、病気になる者や残念なことに死亡してしまう者が多く出てしまっている孤児院であったからだ。

 教会に結構な金額の寄付をしている裕福な夫婦が、養子を迎え入れるために孤児を見に来ても、あまりの不健康さに考え直すといったことも多々あった。

 教会の上層部は評判が下がることを特に嫌うため、孤児院の運営に関して苦言を頂くことが常態化していくある日、孤児院の院長である神父が孤児に罰を与えてしまった。


 「お前たちの出来が悪いせいで、この私が責められることになるのだ。

 このようなことを二度と起こさないためにはしっかりとした躾が必要だな。」


 当初は掃除などの当番を増やす程度のものであったが、止める者がいない為、罰は体罰となり、徐々にエスカレートしていき、遂に体力の落ちた子供が亡くなる痛ましい事故が起きてしまった。

 明らかに事件なのだが、訴える者が身寄りもない孤児であり、本人が既に亡くなっているため、事故として処理されてしまうのであった。


 その孤児院に本作の主人公とその兄貴分も暮らしていた。

 今、二人がいるのは、孤児院の反省室となっている外から鍵のかかる石造りの部屋。

 兄貴分の名はイニス。

 イニスは石の扉を睨んで声を荒げる。

 「クソッ。

 あの神父め、今日も散々痛め付けやがって。」


 弟分の名はソリス。

「イニス、イニス。

 声が大きいよ。

 誰かに聞かれたら告げ口されちゃうよ。」


 この二人には血の繋がりは無いが、近所に住んでいた幼なじみで、拾われる前から共に生活していた為、他の孤児達よりも仲間意識が強い。

 兄貴分のイニスは、まだ小さなソリスを守ってやらなくてはならないと感じている。

 弟分のソリスは、イニスのことを近所のお兄ちゃんとして接し、頼りになる存在だと思っている。


 「俺は何としてでも生き延びて、あの野郎に絶対に仕返ししてやる。」

 イニスは憤懣やる形なしと言った態で、ソリスの注意を全く聞かない。

 ソリスはイニスの意見に同調する。

 「これだけ酷いことをされてるのだから、僕もそうは思うけどさ。」

 イニスはソリスを見て口を開く。

 「だろう?

 身体はあちこち痛いが、動きは問題無さそうだ。

 とりあえず、今は大人しくしておくか。

 癪にさわるが、静かにしていないと、ここから外に出してくれないしな。」

 ソリスはイニスの意見に賛同する。

 「そうだね。

 今のうちに体を休めておかないとね。」


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