第2話 教会と孤児院
その時代にはかつて幾つかの戦争があり、孤児となってしまった者がいる。
国は都市の復興を重要視していたために、孤児については端から除外していた。
国から見放されていた孤児達に救いの手を差し伸べたのは、国ではなく教会であった。
国は渡りに船とばかりに、教会に気持ち程度の補助金を支払うことで、体裁を整え最低限の義務を果たしたことにした。
教会は孤児院を開き、目に見える形の慈善事業を始めた。
「我らの神は皆様と共にあります。
可哀想な孤児達の為にも祈りを捧げましょう。」
教会は、体力的にも精神的にも疲弊していた民衆の心の拠り所となり、生活が安定している貴族や富裕層にも、良い慈善事業(実際は民衆の反感を避ける為の隠れ蓑として)と受け止められ、思ったよりも多くの寄付が寄せられた。
教えを広めたい教会の思惑により、受けの良い慈善事業として始まった行動が、変化していくのは時間の問題であった。
教会に寄付として寄せられた金品は、裏で一部を返金したり、お返しとすることで貴族や富裕層との繋がりを得たりと、孤児院の運営よりも国における教会の発言権を上げるために使われていくようになった。
また、教会は孤児院で優秀な者を見つけ出し、貴族や富裕層の子供が出来ない夫婦などに養子として斡旋していた。
見目が良かったり、小さな頃から才能を発揮している者、いわゆる見込みのある孤児は、売値をさらに上げるためにしっかりと食事を与えられたが、多くの孤児はひもじい思いをしながら育っていく。
孤児達は日中は外での作業には行かされず、教会内の掃除をする者、敷地内の瓦礫を撤去する者、農作業に従事している者に大きく別れる。
午後から暗くなるまでは、勉強や才能を伸ばす時間が与えられている。
以前、孤児院での暮らしに耐えられず外で暮らそうとする者が出た結果、質の悪い者に唆され悪事に手を染める者や、使い捨てにされる者が現れ、犯罪が横行した為に治安が悪くなり、教会の管理責任を問う声が起こり、大きな問題となってしまった為に、教会は孤児達を内部の作業に従事させ、教会の敷地内に閉じ込めることにした。
外に出られたならば、中には食べ物を恵んでくれる者もいるが、農作物は厳重に管理されているため、内部の作業ではなかなか食べ物にありつくことは出来ない。
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