〜鯖、鯖、鯖〜
旧場広町樹海にて
一級冒険者【黒鉄の帝王】ナナ・トゥデイから吉崎大の脱走の連絡を受け、特別機動隊は警察と協力して旧場広町樹海探索任務を開始。
メディアに目を触れさせない秘密裏の出動という事で一切の情報を公開しなかった。
しかし、特機も樹海の事前情報など全く知らないままの探索任務であった。
案の定、機動隊は森の中に迷い込んだ。
そして———
あり得ない。
こんな事があり得てたまるものか。
「HQ、HQ!!こちら
トランシーバーに叫ぶ。声は森の中にこだましている。
『こちら
自分でもおかしいと思う。でも言わないといけない。
頭が狂ってると言われても仕方がない。
「魚が!!魚が浮いている!!」
『……もう一度言え。何が浮いている?』
やはりそう来たか。しかし目の前で起きている状況だ。しっかりと伝えなければいけない。
「魚だ。魚が縦に浮いている。しかも青魚だ。これはどう見ても鯖だろうな。俺は確かに森の中にいる。なのになぜ鯖が浮いているんだ」
『落ち着け、それが幻想の可能性は?』
その質問に答える為に、鯖に触れてみる。
ぬめっとした感触、ブニブニした弾力。
「ああ、クソ。嘘であった方がまだマシだった。どれも本物だ」
鯖が縦に浮いている。何匹も、何匹も。
腐食は無く、まだ鰓が動いている個体もいる。
「死にかけってわけかよチクショウ」
吐き捨てるように呟く。
海や店で見る分にはなんともないのにこうも場違いだと、恐怖が勝ってしまう。
いや、普通でも鯖が縦に空いてたら奇妙だ。
空から魚が降ってくるだけでも奇怪だというのに、さらに奇妙だ。
俺は何を見せられている。
シュルレアリスムの一種か?
サルヴァドール・ダリか、ルネ・マグリットがこの現実というキャンバスで絵を描いているのか?
……確かにこの構図どこかで見た事があると思ったらルネのゴルコンダじゃないか。
言うなれば、鯖のゴルコンダか?
いや、馬鹿馬鹿しい考えはよせ。
超感覚でこの世界を認識するのは、この世界に取り込まれているのと同じだ。学校で学んだ、薄っぺらい上澄みみたいな知識だけで良い。
だが鯖が浮いている。
何か意図があっての事なのか?
この鯖は一体どこから現れた?
そもそもどうして鯖なんだ?
鯖が視界に入るだけで恐ろしい。
鯖が視界に入るだけで恐ろしい。
生臭い。
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