第14話
もう、冬って季節じゃないんですね。まだ寒い日が続いていたので、もう卒業の季節って感覚が全くありませんでした。それでも、桜のつぼみは大きくなっていたし、梅の花はとっくのとうに舞い散って、地面が白くなっていました。
「よー」
「あれ!?」
「ん?」
「センパイ、来てくれたんですね?」
「はは、当たり前だろ。俺の放課後は結局、ここにしかないんだよ。3年間ほぼ毎日通ったここが、俺の青春なの!」
「…素敵ですね。なんかこう…青春が思い出じゃなくて場所なのって。姿が変わっても、ここにあるって、あったっていう事実が、目に見えるのはいいなあと思います」
「んなこと言ったらキリがねえ!青春には形がない。思い出かもしれないし、場所とか、人とか、わずかな一瞬のあの時だけかもしれないし。今こうやって経過してる時間。まさに今も青春だと思うよ」
彼はそう言って微笑んだ。それなら俺の青春はまともじゃねえな、なんて言って笑いながら。
「確かに、卒業式前日にわざわざ自習室に来て私にちょっかいかけてくるのはマトモじゃないですね!!」
「えそれただの悪口じゃない???」
「冗談です☆」
「え、ムカつく……」
「あちょっとセンパイ、これってこういう解き方でもいけます?」
「おお急だな。…んえー……ああ!そっちのが多分簡単に行けるな。…え?お前頭良くね?」
「んふふふふふ、天才になっちゃいましたーっ!ぱんぱかぱーーーん!!」
「パッパラパーの間違いだろ」
「はい!?!?」
彼女の不貞腐れたような顔。彼はふふふと笑った。
高校3年、春。俺はやっぱり、この子が好きだ。
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