第12話

明日はセンパイの受験日。1番邪魔しちゃいけない日。でも、どうしても頑張れを言いたいんです。でも、でも。絶対今日だけは、邪魔をしちゃ__。

「……こんにちは」

「…んお、珍しいな。お前が自習室来るなんて」

「…あはは、もうそんなに来てなかったですか」

「おう」

「…」

「…あー、最近調子どーだ?」

彼は素っ気なく聞いた。

「チョーシはいい感じですよ。センパイのおかげで授業も全く寝なくなったし、テストの順位も右肩上がりです」

「俺のおかげなのかそれ?」

「そりゃそうですよ!センパイがいなきゃ勉強から逃げる毎日でしたもの!」

「なんだそりゃ?嬉しいけどもさ」

「センパイがいっつも集中しろって言うから、授業もテストも集中して頑張ったんです!」

「…それはお前の力だろ?俺なんかここで呆然とペンでカリカリやってるだけだったよ。……お前はどっかで勉強してたのか?」

「家じゃできないので、駅のなんか勉強できるスペースのとことか…教室でもやってました。…けどこの自習室が1番居心地いいですね、最近になってやっと気づきました」

「そーかそーか!…つってもなぁ…この自習室はもうすぐなくなるぞ」

「え"」

「利用者が少なすぎるため!しゃーねえけどな」

彼はケラケラと笑いながら本を読み始めた。

「…お勉強いいんですか?」

「俺は直前までやるとむしろ成績下がるタイプだから」

「ちゃんと集中してやってくださいよぉー?」

「っせえなぁー、やってるよぉー!」

彼は笑うと、すぐに不安そうな表情になり、本をパタンと閉じた。


高校3年、晩冬。俺は諦めない。

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