第10話

だいぶ冷えてきました。暖かな服を身にまとい、今日も学校に行きます。登校は電車です。実はセンパイは自転車なんですが、雨の日は電車です。だから雨の日はハッピーで仕方ありませんでした。でも今は、雨が嫌いです。私に気づいてくれないセンパイを見てしまうからです。単語帳を睨むセンパイもいれば、揺られる電車の中でも何かを殴り書きするセンパイもいます。どっちも共通して、本当に顔をしてるんです。

「…おはようです、センパイ」

なんで話しかけにいったんだろう。ほら見てよ。センパイの困惑した顔が痛い。

「はよ」

「…」

「…」

「…今なんの勉強してるんですか?」

話すなって、言ったじゃん。なんでよ。話さないで。

「数Ⅲです」

「難しそうですね!」

「ちゃんとわかれば秒殺」

「頭いい人は違うなぁ…」

違う、私こんな話したくない。こんな話するためにわざわざ話しかけたんじゃない。

「ね、センパイ」

「ん」

「………__頑張ってください、ね」

「お?おう」

違う、違う__言えない。…言わない。そう決めた。決めたじゃん。『好き』を言うのは、センパイの受験が終わってからだ。今は関わっちゃいけない。

「応援してます」

彼女はにっこりと笑って、どこかへ行ってしまった。彼は教科書に目を落とす。

…受験が終わったら、嫌でも返事をしよう…OKだと言おう。彼はウトウトしていた。


高校2年、冬。私の恋心は狂っている。

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