第8話

俺が1人になって1年。すんごい特徴的な子が1人だけ。毎日来てくれた。たくさん話してくれた。俺のことを好きだと言ってくれた。俺が1人じゃなくなって1年。その子は来なくなった。俺が間違っていたのだろうか。俺が好きだと言わなかったから?付き合おうって言えていたら?好きを言うと、会えなくなると思っていた時期がありました。じゃあなんで、お前に好きを言ってないのに消えるんだ__。

およそ半年ぶりに会ってから1週間。いつも通り自習室に行く。いつも通り誰もいない。でもきっと現れると待っている。あの子の踊るような足音が聞こえてきた。

「セーンパイ!」

「おー!久しぶり!」

「1週間会ってないだけですよー!」

彼女の様子は1つも変わっていなかった。これが、彼女の決意の姿だったなら、俺はもっと早く好きだと言えばよかった。

「すみません、半年も来れなくて」

「や、大丈夫よ。なんかあるならしゃーなし」

「…ほんとは、なーんにもなかったですけどね」

「え?」

「…決めたんです、私。センパイのために__失恋します!」

「__はい?」

「センパイが受験終わるまで…いや、卒業するまで。私のことは忘れてください。私より受験が大事なの、センパイの頭があればわかるでしょ!」

「いや、あの…追いついてない、理解が…」

「とにかく!私は失恋したんです!半年前に!これでセンパイは集中して勉強に励むことができますね!やったぁー!…だから__センパイ、また今度会いましょう。お元気で」

「いやいやいやちょちょちょっ」

彼女は笑顔で自習室を出た。いつもより強く閉められたドア。ああ、俺は本当にふられたんだ。


高校3年、晩夏。俺は失恋した。

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