第7話

私の戦いはここからだったと、思い返せばそう感じます。少しでもセンパイに近づけるように頑張りました。勉強ももちろん、人としてあるべき姿を目指しました。もしまた、センパイの隣に座れる時が来た時に、なんでもできるようにしたかったんです。

ですが、そんな時は訪れません。センパイはずっと机に向かっていました。何度も自習室に入ろうと決意しました。それでも入れませんでした。センパイのあの顔を見たら、邪魔しちゃ悪いと思ってしまいます。

少なくとも、センパイの受験が終わるまで付きまとうとはやめよう。それは恐らく、私の失恋そのものを表すものでした。私は最初に言ったと思います。私はすぐに他人に好きを言う人だと。熱しやすく冷めやすい__簡単に言えばそうなるかもしれません。でも今回ばかりは、確かにすぐ恋をしましたが、すぐに冷めたりはしませんでした。それが、センパイが私の運命の人なのではないかという、気持ちの悪い想像をしてしまうほどです。

「あ!いた!普段教室来てもいねーんだもん」

「ほへ?」

センパイは勉強道具を持ったまま、私の教室に来ていました。理解が追いつかないまま、センパイは私に言います。

「何かあるならいいんだけど、自習室来いよなー」

そしてセンパイは去っていきました。ああそっか。何も言わずに行かなくなったから、センパイ心配してくれたんだ…迷惑かけてしまった…。でも、私が隣にいたらセンパイの邪魔になるんじゃないか…集中を切らしてしまうんじゃないか…そんな不安がよぎる度に、センパイのあの言葉を放り出してしまいたくなります。

じゃあ、今度で最後にしよう。それでいい。


高校2年、晩夏。私はセンパイを嫌いになることにした。

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