第6話

あの話は結局怖くて話せませんでした。センパイは優しいからきっと、私を捨てないなんて言い出してたと思います。どうせそんなの無理なのに。

「よーし。最高学年とは3年ぶりだな…!」

「センパイ、それ当たり前です!」

「やべ、馬鹿がバレる」

彼は少し恥ずかしそうに笑った。

「…センパイは、受験生ですか」

「ん?まーそうだな」

「勉強、頑張ってくださいね」

「おーそりゃもちろん。ありがとな!お前も頑張れよ!」

彼の笑顔が私には痛かった。きっとセンパイはこの言葉の意味にも気づいていない。

「来たぞー…あれいねぇ」

その日の放課後、彼女は自習室に来なかった。何時間待っても、何日待っても。

「…気ぃ遣ってくれてんのかねぇ…それとも__」


高校2年、春。私は失恋した。

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