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藤井柊太

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ラジオからたまに聞こえる流暢なサウンドロゴが頭にのこる

こんにちは 声のちいさな人の剥くつめたい林檎ひとくち齧る

増築を繰り返す家の事情にもくりかえしくりかえし降る雨

信号機のささやかな進化は壮年の感情に似て薄くなりゆく

人間の言葉を理解する犬の気持ちになって空をみあげる

真昼間をときに空から見下ろして日かげに佇む鳩の正しさ

駅前の秩序のなさを盛り上げる存在としてのモニュメント まわる

海へゆく感傷ならばそれらしくスイッチバックをしながら進む

春雨のなれの果てなる水の往く河口の長い橋を渡った

タグボートが引っ張るいかだ連なって川の空気を海へと運ぶ

順光線 生い立ちはすべて幻の堤防からのパースペクティブ

あらかじめ決められたことに抗えず桜の木肌のようなやさぐれ

公園のどうせ擬木の柵だからおもいきり体重のせて伝える

咲いてから花だとわかる夕さりにボーカロイドの間違える歌詞

すべてを顔に出しながらババ抜き命に貼りつくひかりのように

安直な季節の終わりにふさわしいデュエル サムネイルだけで笑える

夜のお堀沿いを歩いてそれぞれに白灯蛾の印象を話した

なめらかな悪口 へらへらしてる間に埋め立てられる夜の水際

暦と季節が微妙に違う 心臓はあしたも動いてくれるだろうか

長い休みの序盤のようにジャムの中ブルーベリーのかたちがのこる

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perspective 藤井柊太 @ToutaFujii

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