雨の慕情 ~切なさ、夏にも~

雨……

梅霖ばいりんを眺める窓辺ひとり宿


今だけとすり寄るわんこ梅雨寒つゆざむ


気まぐれな君を待ちわぶ長梅雨よ


くらうつす横顔返り梅雨


ゆき去りて一人の部屋に送り梅雨


雨傘をなくした梅雨の夕べかな


夏の雨弁当比べ教室で


小糠雨こぬかあめ短夜を明かし音もなく


蝉が泣くらずのあめと袖を引き


洗車雨せんしゃうか短冊持ってそわそわと


ネオン消え七夕の雨待ちぼうけ


雨続き子がぐずる朝夏休み


あの日には翠雨すいうに濡れた傘一つ


盂蘭盆会うらぼんえ雨が洗った墓参り


うれい顔傘に隠した土用雨どようあめ


置き去りのパラソル残雨ざんうもの悲し


夏風邪を引いても独り雨のあと


鬼雨きう注意火点ひともごろを騒がせて


ビアガーデン暑気払い雨に打たれて早じまい


送り火は篠突しのつく雨も消せはせず

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