光と塵を共にする

第10話 実験24年10月

現在の時空に戻ったとき、張岚と楊語琴は図書コーナーにいました。

左手で書くことは確かに不便です。張岚は右側に座り、楊語琴は左側に座り、宿題やメモを取るときにいつも無意識にぶつかります。

「ああ、ごめんなさい、触れてしまった。」張岚は謝りながら、修正液を楊語琴に手渡しました。

「大丈夫です。」楊語琴は左手で字を書く張岚を見て、「張岚さんはすごいですね、私はできませんが、左手で字を書く方法を教えてもらえませんか？」

「え？左手で字を書くの？冗談じゃないでしょう。」張岚はペンを止めて言いました。「私も以前は右手で書いていましたが、ある時期、右手が使えなくなったので、戻すことができませんでした。」張岚は詳細を話すことはありませんでした。不快な経験を現在の人々と共有することはできませんでした。

「それはどうして戻らなかったのですか？」楊語琴は理由を知りたそうに尋ねました。張岚が「私は右手を封印した」という中二病的な言葉を言うわけにはいかないので、適当な理由でごまかすのが良いでしょう。

「それはね？左手で書いた字の方が右手で書いた字よりきれいだと思ったからさ。」しかし、この言葉を言うと少し変です。なぜ左手で書いた字の方が右手で書いた字よりもきれいだと自負しているのでしょうか。

適切な理由を言わなければならないなら、おそらく右手の字はあまりにも制約が多く、あまりにも角ばっていて、本来虚無的なものを刻意に追求していると感じました。それに対して左手は比較的に筆勢があり、常に制約を突破し、飛躍を追求しようとしています。

その後、あの後輩と完全に連絡を失い、交わった証拠はただ右手を封印したことだけです。過去を振り返ると、かつての自分は放浪的で世俗の束縛を受けない存在だと思っていたかもしれませんが、今では笑い話に思えます。しかし、当初一歩引いて広い世界を選んだなら、もうすでに琼山中学で学んでいるかもしれません。

しかし、それは間違いです。それは結局、自分が早く学習を始めなかったことが主な原因です。

しかし、もし早く学習を始めて琼山中学に入学していたら、おそらく楊語琴とは会えなかったでしょう。同じ机を見つめながら、彼女は頭を下げて字を書いており、髪が彼女の顔を覆っています。このような状況は、省図書館での時とほとんど変わりません。

「どうしたの？」張岚が彼女を見つめているのを見て、楊語琴は尋ねました。

「ちょうど、以前一緒に省図書館で勉強して、ただの通行人から同じ机の人になった経験を思い出していたんだ。」

「ああ、なんで急にその話をするの？恥ずかしいじゃない。」楊語琴は少し顔を赤くし、教科書で半分顔を隠して言いました。

「奇妙なことを考えているわけではないよ。ただ、ちょうど過去のことを思い出しただけさ。」現在の自分の状態と能力では、次の行動を起こすと誤解を招く可能性があるため、張岚はただ同じ机の関係を近づけたいだけでした。少なくとも彼女が中学時代のように他の人から孤立することはないようにしたいのです。

現在のクラスの雰囲気は和やかですが、まだ高校一年生であり、実験中学のいくつかの潜在的なルールを知りません。まるで初心者の村のような感じがします。

張岚は残りの数学の問題を書き終え、楊語琴に尋ねました。「以前、私に気づいていましたか？雨の日に一緒に帰る前のことを」

楊語琴は下書き用紙に丸を描き、思い出したように言いました。「大体、印象に残っています。左手で字を書く人を見ると、注意を引きますからね。」

「張岚さんが言ってくれるといいですね。」

「うん。キャンバスシューズとニーソックスを履いていたと思いますが、でも私服の楊語琴さんはとても可愛いですよ。」

「ああ、張岚さんは女の子を見るために図書館に行ったのですか？」

「また、次に図書館で勉強するときは、見てもらえるかもしれませんよ。」

「楊語琴さんがそんなに優しいなら、私も頑張らないと。」と言いながら、張岚は歴史の宿題の選択問題を書き終え、赤ペンで20個の「正解」を付けました。期中試験でもこのようにできれば、かつて失ったものを取り戻し、自分自身を証明できるでしょう。

時間外の思い出：学校のトップ10シンガーコンテスト（20人入り）

郭佳は理解できなかった。なぜクラス委員の大人が同じ学生会の部署で働いているのか。

最初の採用時には、名簿にその人の名前はなかったはずなのに、部署の会議でその人を見かけた。後で分かったことだが、衛生部のメンバーは十分だったので、学生会の上層部が彼女を配属したのだろう。まさに狭き門ということだ。

「あなたたち2人、これを手伝ってくれる？」先生は箱を指差した。「7階の音楽教室に運んでください、お疲れさまです。」

「ああ、最後の1階だけだ。」最初は2人で運んでいたが、最後は郭佳一人で運ぶことになり、陳笑は後ろで支えているだけで、郭佳はこの奴が意図的にやっていると感じた。

普段は元気いっぱいなのに、仕事始めになると体力がなくなり、しかもちょっと危険な作業の時に悪さをするという、これは良くない。

ついに教室に到着し、郭佳はこの重い箱を置き、床に倒れた。最初はただの広告チラシだと思っていたが、広告の下にカメラがあることに気づいて、郭佳は驚いてカメラの状態を確認した。幸い、最も重要なレンズには問題がなかった。もし運搬中に自分のミスで損傷があったら、この高校は通過できなくなるだろう。

「大丈夫、問題ないよ。」郭佳は大まかに確認した後、「お前、さっきは一緒に荷物を運んでくれなかったね、金曜日の掃除は参加しないでおこうかな。」

「それはできないよ。ミスをしたら逃げ出すなんて許されない。それに私はあなたを支えていたよね。」陳笑は反論した。「それにしても、ちょっと休ませてくれ、疲れたんだ。」

「だめ、早く戻ってきて。」陳笑は郭佳の手を強引に引き上げようとしたが、郭佳は少し悪戯をしようとして、この奴に仕返ししようと思った。

郭佳はただ引きずって帰らないつもりだったが、陳笑の手のひらが汗で滑り、結局彼女のバランスが崩れて郭佳に向かって突っ込んできた。

「ドン...」

陳笑は郭佳の腕の中に倒れ込んだ。その間、郭佳はいつの間にか彼女の腰を抱きしめていた。

「痛い...」郭佳は立ち上がろうとして、おそらくは郭佳の手の位置に驚いたのか、陳笑は突然顔を上げて、前者の顎にぶつかった。

そう、予期せぬ頭突きがやってきた。郭佳は自分の舌を噛んでしまったが、口の中に鉄のような臭いが広がった。

郭佳は口を押さえながら、晩ご飯は食べられないことがわかった。ジュースを飲んで乗り切るのがいいだろう。

「大丈夫？」本来は重く転んだはずの陳笑が、今は郭佳の状態に気を使っている。

「大丈夫、ちょっとだけ、うん、水を飲むだけでいい。」郭佳は口を押さえながら拭いた。幸い、血は口から出てこなかった。

陳笑は手を差し伸べ、郭佳の口元を指さし、郭佳が彼女が次に何か奇妙なことをする心配をさせないようにした。

「口の端に血がついてるよ。」

ううん、これは鶏を盗んで米を腐らせる感じだ。相手をからかうつもりだったのに、舌を噛んでしまった。妹なら、しっかりと叱ってやる。

言わずもがな、陳笑と郭佳の妹は性格が非常に似ているかもしれない。見た目は気楽そうで、細かい処理に満足している。

郭佳は心の中で静かにため息をついた。なぜこの奴と同じ中学校、同じ高校、同じクラスになってしまったのだろう。

郭佳は黙っているのを見て、些細なことを考えているのだろうと陳笑は尋ねた。「大丈夫？ひどい？保健室に行く？」

郭佳は首を振り、言った。「いいよ、大丈夫。任務完了を報告しに行こう...」