第13話 王国の魔法使い

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王国と帝国の戦いが始まった。

南の平原で激突した両者は、そこから一進一退の攻防を続けたが、騎士王子カインら王国騎士団の奮闘で、次第に戦況は王国有利に傾きかけたかと思えた。

しかしー、

「 西側のダンジョンから、大量の魔物が溢れ出し、王国に向かっている?」

「そう、ダンジョンの入口はこの地域には無数にあるけれど、そこから一斉に魔物が出現して王国を目指して侵攻して来ているわ。」

 これは、おそらく帝国の仕業だろう。

 ダンジョンの下層から魔物を誘導し、地上に送り込んでいる。

 地上に溢れ出た魔物は、人間を襲うため、近くの都市や街を襲う習性がある。

 王国へと侵攻しているのはダンジョンから一番近い都市があるからだろう。

 だが、こんな事ができるのは帝国の暗黒魔導師の仕業に違いない。

 

 そこで、王国は、魔物たちの侵攻を阻止するために、ダンジョンの下層へ遊撃隊を複数派兵するわ。

  ついにこの時が来てしまったか。

 私たちが、帝国軍と戦う時が。

 そして、人間と戦う時が。

 ダンジョンには、無数の魔物が存在する。

そのため、軍隊を送り込んで制圧しようとすると、その魔物たちに気づかれて襲われやすくなる。

そのため数名の少数精鋭のパーティーでダンジョンに侵入し、そして魔物たちを誘導する帝国の魔導師を撃つ。

 ダンジョン攻略部隊は、全部で6つ。

1つの部隊につき5、6人のメンバーで編成される。

 ダンジョン攻略部隊は、それぞれ比較的魔物の出入りの少ない小さめの入口を通ってダンジョンの深層部へと向かう。

 なるべく魔物に発見されるのを避けるため、それぞれ別の入口からダンジョンへ侵入する。

 遊撃部隊の一員である私とエレスも、その攻略部隊へと組み込まれた。

  

 私たちは、王国の騎士や魔法使いなどほかのパーティーメンバーとともに、ダンジョンの洞窟を通っていく。

   

 剣を持った人型の蜥蜴の魔物、リザードマンが8匹あらわれた。

  王国の騎士たち3人は剣や槍などの武器で応戦する。

  後方からは、エレスや王国の女性魔法使い、メノウの炎と氷の魔法が放たれる。

 私は周囲に気を配りながらその戦いを観察していた。

 もしかしたら、魔物以外にも帝国軍の騎士や魔法使いなどがどこかに潜んでいるのかもしれない。

  王国の攻略部隊は、私が魔法具と意識を接続している間に簡単にリザードマンを倒してしまった。

  「 なかなかやるわね。メノウ 。 」

「ありがとう。マリー。」 

 

 「さすが王国の魔法使いね。後方支援はあなたに任せたわよ。」

 私は馴れ馴れしくメノウの肩を叩く。

 

 その時、地面が急に光り輝き、魔法陣がそこに出現する。

「 えっ!?」

何が起こったの?

そう思った瞬間、私とメノウはダンジョンの下層へと転移した。

 

 「うううっ、痛たたた」

 空間転移した私たちは、地面に落下して倒れた。

  そこはダンジョンの下層らしく、魔界の草原が広がっていた。

 さっき私たちが、いや私が踏んづけたのは、どうやら転移門とかいうヤツらしい。

 おそらく帝国の仕掛けたトラップだ。

 転移門トラップの魔法は、相当高度な魔法だ。さすが、帝国の暗黒魔導師恐るべし。

 魔物がどこに潜んでいるのかもわからないので、私は慌てて立ち上がる。

 メノウも杖をついて立ち上がった。

「大丈夫? 」「ええ。」

 「ちゃんと足元は見ないと駄目よ。」

そう言って、私はあたかもメノウがトラップ魔法を踏んづけたかの言い方をした。

  上手く行けば、責任転換できると思ったのだ。

 「転移門踏んだのは、あなたでしょう?」

 メノウがナメクジを見るような軽蔑した目で、私を見てきた。

 駄目だ。気がついていたか。

 さあ、先へ行きましょう。

 私は何事もなかったかのように先へ進んで行く。

 


転移トラップの目的は、パーティーを分断して少数を孤立させる事だ。

 1人や2人の時に魔物に襲われると、当然窮地に陥る。

また、そこに修道士などがいないと、魔除けの魔法など魔物に気づかれにくくする魔法などが使えなくなる。

 多少のケガやダメージなら、ポーションや回復魔法などで治せるが、大幅にダウンした戦力は合流するまでもとには戻せない。

 炎や氷などほかの攻撃魔法が発動するトラップよりもよっぽど恐ろしいトラップだ。

 エレスたちは大丈夫だろうか?

 いや、忘れてはならないのはエレスは元王族の血統以前にトップレベルの魔法剣士なのだ。

 しかも、彼女には王国の精鋭の騎士が3人ついている。

 そう簡単にはやられないだろう。

 むしろピンチなのは私たちだ。

 私たちは今、2人しかいない。

 はやくエレスたちに合流しなければ。


 草原を突き進むと、巨体なカタツムリの魔物ブルーエスカルゴが20匹、巨大なチョウの魔物レッドバタフライが20匹、さらにイエローラビットと呼ばれる巨体なウサギの魔物が20匹あらわれた。

 魔法具・風の腕輪を装備している私は、風の魔法エアロの風圧で接近してきた敵を吹き飛ばす。

 風の魔法具を装備している理由は、風の魔法の風圧で敵を吹き飛ばして、敵との相性のいい魔法具と精神を接続する時間を稼ぐためである。

 風の魔法で吹き飛ばせなかった敵は、空手や柔道などの武術で対応する。

 私は飛んできた巨大ウサギをぶん殴る。

 さらに4匹飛んできたウサギを、メノウが雷の魔法、サンダーで撃ち落とす。

 魔法具と精神の接続が完了した。

 私が現在装備している魔法具は、

1つ、肉体や運動能力を強化できるスピリトゥスの腕輪

2つ目が、風の魔法具である。

 私はスピリトゥスの腕輪は装備したまま、風の魔法具の装備を解除し、変わりに炎の魔法剣を装備する。

 そしてもう一つの魔法具は、やはり剣の魔法具、氷の魔法剣を装備した。

 魔法剣を二刀流で装備する。

 その理由は、スピリトゥスの指輪を含めて、接近戦での戦いを重視して、強化するためである。

 遠距離攻撃が得意な魔法使いのメノウとの連携を生かすため、接近戦での能力を全振りで強化させたのである。

 私は巨大カエルを炎の剣で、巨大なチョウを氷の剣で次々と斬りつけていく。

  巨大カエルが炎の剣で燃える。

 バタフライが氷の剣で凍りつく。

 特に弱点のない巨大ウサギはスピリトゥスで肉体強化された私の華麗な蹴り技で蹴り飛ばす。

 メノウも後方から炎や氷などの魔法で援護を続けてくれた。


 「次々と魔物を倒していく。余裕だわね!?

エレ!!」

そう言って後ろを振り返ると、メノウが杖でラビットをたたいているのが見えた。

 杖でラビットを連打している。

 あんな雑魚ウサギを倒すのに、こんなに時間がかかるとは。

 弱い。あの魔法使い、力が弱い。

 魔法使いは冒険者パーティーの中でも力が弱いと言われているが、想像以上に弱い。

 おそらく遊撃部隊などの王国の軍隊に所属するパーティーは、5、6人のメンバーでチームを組む。そのためそれぞれの得意分野や得意な能力を中心に強化して、連携を取って戦う事でお互いの弱点をカバーしあうのだろう。

 この戦略はメンバーがそろった万全の状態なら、最大限威力を発揮するはずだった。

 だが、今回は予想外の自体が起きパーティーの真価が発揮される前にメンバーが分断された。

 どこかの誰かが( 私か )転移門トラップの魔法を発動させたからだ。

 遠隔魔法が得意と言う事は、基本的に接近戦には弱いという事だ。

 巨大カエルが口からムチのように舌を伸ばした。

 その舌がメノウの杖に絡みつく。

 そして、その杖をカエルに取られてしまう。

 そして、無防備のメノウにウサギが体当たりをする。

 「キャッ!!」

メノウは尻もちをついて倒れてしまう。

 メノウが目を開けると、今度はバタフライが細長い口を伸ばしてメノウめがけて空中から襲いかかる。

 私は氷の魔法剣をバタフライめがけて投げつける。氷の剣で串刺しになり、バタフライは凍りついて落下する。

 私は全速力でメノウの方へと走りながら、やはりメノウに飛びかかるフロッグに炎の剣を投げつける。

炎の剣で串刺しになった巨大カエルは燃えながら落下する。

 最後にジャンプした巨大ウサギに私は飛び蹴りを喰らわせた。

 巨大ウサギは岩に激突する。

 私はバタフライとカエルに刺さった剣を抜くと、メノウを守りながら残りの魔物たちを魔法剣で斬っていった。

 

 

 

 

 

 



  

 

 


 

 


 

 

 

  

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