第10話 相思相愛

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「マリーさん、私、感激しました!!今まで5、6 回に1回くらいしかまともに命中しなかったのに、マリーさんのおかげで、ほとんど命中するようになりました!! 」

    森の中をひたすら前進し続ける私に、リズが歓喜の声をあげながら話かけてきた。

  「私も、1人で無理に敵を倒す必要はないんだという事を学びました。パーティーで役割を決めて、それぞれがその役割を果たせばいいんだと気付かされました。

私は、パーティーの盾としての役割を果たす。フィルがつないで、敵を倒すのはリズに、任せればいいんだと」

   クールなライザも感激している。

  そしてフィルはー

「まだまだ私たちは、お姉様たちのコンビには遠くおよびませんが、待ってて下さい。

  3人でアベルさんくらいは瞬殺できる実力を身につけます。

あと、合気道も教えて下さい 」

  木に生えているリンゴを噛りながら、

フィルが後ろ向きで歩きながら言ってきた。

   フィルは私に、いや、日本の武道にご心酔らしい。

   我が奥義を極めんとする勢いである。

   あと、アベルさんの事を相当舐めている。

   「あなたたち、アベルのパーティーにいるんでしょう?

     許可はもらったの?」

  エレスが聞いてきた。

  アベルたちベテランの連中が何を考えているのか、どう思っているのか知りたいのだろう。

   「はい、お姉様たちのパーティーに臨時で応援、兼戦闘訓練と武道の特訓だと言ったら、すぐにOKしてもらえました。」

    「そう。」

   私たちの戦闘能力は、特に私の武道や剣術の技術は、ギルドに所属している冒険者連中に知れ渡っている。

    その私に若手の技術指導が任せられるというのは、やはり連中にとっても有益なのだろう。

   「私たちは、いずれは3人で独立するつもりです。

   やっぱりこれからの時代は、ガールズパーティーですから。」

      フィルが胸を張って言った。

   「私、実はお姉様たちに、マリーさんとエレスさんの関係に憧れていたんです。

    深い絆があって、お互いに信頼しあっていて、そして互いを思いやっている。

    ギルド内でも相思相愛の熱愛関係だと有名なんですよ。」

     「誰がそんな事を言っていたの!?」

  エレスが顔を真っ赤にしてフィルの胸ぐらを掴み、詰め寄る。

   「く、苦しいです。エレスさん。

  アベルさんとか、パーティーのみなさん。 それに、ギルドの古参型たちです。」

   フィルが冷や汗を流しながら言った。

   やはりこのお姫様を怒らせるのはこの子娘にとっても怖いらしい。

 「そう、アベルが。あとの連中もあとでリストを作って頂戴。

    今度会ったら、まずアベルから順番に締め上げるわ。」

    「エレス。」

 そんなに嫌がらなくても。

   少し、傷ついた。 

  「どうしてそんなに、エレスさんはマリーさんと噂になる事嫌がるんです。

    マリーさんと仲がいいから一緒にパーティーを組んでるんじゃないんですか?」

   「ち、違うわ。別にマリーとは、パーティーを組んでもいいなんて一言も言っないわ。

   でも、私がいくら拒否しても、彼女が

無理矢理付いてくるから仕方なく一緒にいるだけ。」

  エレスが意固地になって弁明する。

   「私は、彼女のように、マリーのようにガサツでモラルがなくて礼儀作法のなってない女性が余り好きじゃないの。

   私のような王族の、それも王姫にあたる人間は、それに釣り合うような淑女としかお付き合いしては駄目だわ。」

   そう言って、エレスは速足になって先へと進んでいく。

    何も、そこまで言わんでも。

  これは、照れ隠しに言ってるだけだ。

  そう、信じておこう。

 「あのお姫様は、ずっとこうなのよ。」

    「そうですか。

  でも、これではっきりしました。

  エレスさんは、マリーさんの事を本当に、心から信頼しています。」

  「 どうして?」

   

   「だって、自分は高貴な王族のお姫様で、あなたのような庶民の生まれとは違う人間だなんて、そんな発言、普通怖くて言えませんよ。

   マリーさんになら、冗談で通用するって解ってるから、あの言葉は言えるんです」

    「そうか、だとしたら、結構悪くないかもしれないわ。」

   この子娘、結構よく人の事観察してやがるな。

    「 きっと、エレスさんは、どうしていいかわからないんです。

   今まで、自分と対等の立場で話せる人間がいませんでしたから。

  心から信頼し会える、親友に対して、どう接していいのかが解らないんです。」   

  「そう。」

  私も、フィルにこんな事言われて何て言っていいか困っている。

  コイツ本当に何様何だろうか?


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 来たわよ!!

  1人先頭を行くエレスが、真っ先に気がついた。

    前方から、魔物の群れが接近して来た。

    「さあ戦いをはじめるわ。

  あなたたちは、今はとりあえずは、防御を最優先にして。

まず、自分たちの身は自分たちで護れるようになりなさい。」

   「 了解です。」

   3人は顔をあわせたあと、大きく返事をした。

  以前の新人研修では、フィルにはエレスを護衛についてもらった。

   だが今はもう、フィルも一応は冒険者の仲間入りだ。

   しかも、日本の武道、空手をはじめとする様々な武術を、基礎ではあるがそれなりにマスターしている。

   精神的にも成長している。

 そして何よりも、仲間がいる。

   3人の連携があれば、多少の魔物なら跳ね除けられるはずだ。

   接近してきた魔物。何匹かのイエロースライムの群れに、エレスが氷の魔法、ブリザードブレスを発射した。

    イエロースライムの粘着質な身体が凍りつく。

   私は一気に駆け出すと、エレスの前方に踊りでて、ハンマーを取り出す。

   そして次々と凍りついたイエロースライムたちをハンマーで打ち叩いて砕く。

   空中から、今度はスモールフェニックスと呼ばれる巨大な鳥の魔物が、数匹飛んで来た。  

     スモールフェニックスは空中から炎の中級魔法、ファイラを次々と発射して来る。

   「チェンジよ!!マリー」

  私は後方へと反転して転がり込むと、前方に再びエレスがおどり出た。

   そして、エレスは風の魔法剣、エアロソードでファイラを斬りつける。

   ファイラはエアロソードから放出される風圧で四散し、吹き飛ぶ。

   さらにその風圧は空中を切り裂き、空中の気流を変化させて、小さな乱気流となる。

     空を飛ぶフェニックスたちがバランスを崩して、空中で混乱している。

  ライトニング・アローレイ!!

私は光の魔法具と精神を接続させると、

  連続で閃光を発射する。

   フェニックスたちは空中で軌道を変える。

     閃光の方向から、閃光は全弾外れたかと思われた。

    ところが、閃光は空中の乱気流に巻き込まれて軌道を変化させ、連続でフェニックスたちに命中していく。

     天気予報士の資格を持つ(嘘です)、高度な計算能力を持つ 私は、乱気流の動きを見て気流の変化を読んで、ライトニング・アローを発射したのである。  

 「さすがです。お姉様がた 」

  「凄い。私の魔法の矢とは大違いです。」

  「まるでお互いの心が、読めているかのようなコンビネーションだ。」

  フィルたちが、感嘆の声をあげた。 

      

    「よし、今日も余裕だわ!!」

   私がそうあからさまに油断すると、地面が割れた。

   私とエレスの立つ足元の地面が沈み、そこから大きな湖が出現した。

     エレスは風の魔法、エアロレビテトで足元に風の気流を発生して、水の上に立った。

   私は跳躍して、折れた大木の上に立つ。

     「お姉様!!」

 大地からフィルたちが心配している。  

     バシャアッ

  水しぶきがあがり、レッドピラニアと呼ばれる巨大な魚の魔物が次々と飛び出してきた。

    水面に浮かぶエレスは、跳躍とステップでそれを難なくかわし、レイピアで切り落としていく。

    私のところにも、ピラニアが水面から飛び出し襲ってきた。

    私は狭くて揺れる、足場の悪い場所にいるので、対応できない。

  「マリー!!」

 エレスが氷の魔法[ブリザードブレス]で私のいる大木の近くの水面を凍らせてくれた。


  私は大木からその氷の浮島に飛び移る。

   新しい魔法具に接続するまで、少し時間がかかるので、私は逃げ続けなければならない。

   エレスは自分に襲ってくるピラニアたちで手一杯のはずなのに、次々と氷の魔法で

私の近くの水面を凍らせてくれる。

  私は跳躍を繰り返しながら、その氷の浮島に次々と飛び移り、移動して逃げ延びていく。

     氷の浮島に飛び移りながら、飛んでくるピラニアは剣で何匹も迎撃した。

    華麗な剣術でピラニアを斬っていく。

    ピラニアが、口から水鉄砲を発射した。

    私は瞬時に盾を出して受け止めた。

  なんとピラニアが学習して、遠距離攻撃をはじめたのだ。

       私は氷の浮島を飛び移りながら、盾でその水鉄砲を防いで逃げるだけである。

 魔法具の接続が完了した。

   

  電撃の腕輪の魔法、サンダーボルトが発射される。

     水の生き物とは相性がいいはず。

  ところが、高速で水面から飛び出すピラニアは、サンダーボルトを次々とかわしていく。

    サンダーボルトが命中しない。

   キャッ

  水鉄砲が私の盾を弾く。

  「マリー 」 エレスが心配する。

   私はアイテムボックスからナイフを数本、取り出すと、次々と飛んでくるピラニアに投げつける。

    投擲の技術も天才的な私は、熟練者の高度な技量で、10数匹のピラニアに次々とナイフを命中させていく。

   だが、巨大なレッドピラニアに致命傷を与えるほどではない。

  サンダーボルト!!

  再び私は、サンダーボルトを発射した。

    高速で水上に飛び出すピラニアは、さっきと同じく余裕で交わしたかと思いきや。

     サンダーボルトの軌道が大きく変化して、ピラニアに突き刺さった金属のナイフに流れ込んでいく。

     ナイフが避雷針となり、サンダーボルトの電流を誘導させてピラニアに命中させたのだ。

   私はさらに、何発もサンダーボルトを発射して、ピラニアを全滅させる。

    ライザ「凄い!!こんな戦い。見た事がない。」  

  リズ「瞬時に、こんなに冷静に対応できるなんて。」

  フィル「マリーさん、ナイフの投げ方も教えて下さい!!」

   3人が再び大喜びする。

私はしばらく、氷の浮島で休んでいた。   

  

        

      

     

   

    

   

          

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