第27話 焔摩の月
火の月が明けた。
魔界には……。
さらに強い陽射しがやってきた。
「はい。これで魔力の属性相関とその作用、応用結合の授業を終わります。複数の魔力の絡む魔法の破魔にも応用が効くでしょう。明日は簡単な確認テストをしますので、そのつもりで」
「はーい……」
暑い。
暑いっていうか……。
あっつい。
「…………愛歌さま」
「はい……?」
机の上に溶けてる私を見た先生。注意されるかと思いきや。
「日の下では、焔摩の月はどのように暑さ対策をしていましたか?」
「え。えっと……」
今日の気温は…………分からない。温度計、無いんだよね魔界には。多分、45度くらいだと思う。マジで。
焔摩の月は真夏のド真ん中だ。
「…………
「えあこん?」
「あー。えっと、電化製品で」
「デンカセイヒン?」
「うーん……。どう説明しよう」
あのねえ。
いくら焔摩の月でも、
「ああ、聞いたことがあります。人間は、魔力ではなく『電力』なる不思議な力を使うと。なるほど。その技術の道具ですね」
「あー……。魔法に例えたら伝わりやすいですかね。暖気を吸って排気して、冷気を出す箱があるんですよ。仰るとおり電気を使うので箱だけ用意してもこっちでは使えませんが……」
「ふむ。冷気を自動で吐き出し部屋に循環させる魔道具、という訳ですか」
「魔道具?」
魔族の人達は電化製品を知らない。私は魔道具を知らない。
お互い様なんだよね。
「特定の簡単な魔法を使う道具のことです。例えば『火の杖』を振るえば魔法を使わずに火を起こすことができます。『水の杖』も同じく。いつでも清潔な水を生み出せるので、様々な場面で活躍する魔道具です」
「…………なるほど。杖」
「はい。多くは杖ですね」
水の杖欲しいな……。あー暑い。
あっつい。
★★★
「まずは汗をお流ししませんか……。その後、氷菓子を用意させます……」
「うん……。ありがとうメリィ」
私の故郷、
私は子供の頃は基本的に着物だったけど。確か学校を卒業する手前くらいからは洋服が流行りだして。仕事も洋服でやってた。
思い出した。
和服って、きちっと着るとあっついんだよなあ。魔妃の私が着崩す訳にもいかないし。用意してもらっている私用の着物は厚手の良い物で、その分余計に暑い。メリィのお着せも暑そうだなあ。
「……ていうかさ。魔族の人達って、あんまり暑そうにしてないよね。汗もあんまりかいてないじゃん」
「そうですね……。ここは魔族の世界ですから……」
私だけだもんなあ。こんなに暑がってるの。駄目だ溶ける。
魔族は火の月でも余裕で外出するもんね。焔摩の月になっても変わらず。
「ああ、それは魔力のお陰ですわね」
「あぁ! 愛歌おねぇさま!」
「キーラさん。おサキちゃん」
お風呂に着くと、キーラさんとおサキちゃんも居た。そうだ。洗ってあげないとね。
「魔力?」
「よく、凝らして見て?」
「んむむ……」
見る。魔力?
…………あっ。
透明、というか。ガラスのような糸が、皆の周りを回ってる。集中しないと見えないくらいの魔力だ。色の無い魔力?
「体表滞留魔力と言いますわ。我々魔族は常に一定の魔力を放出して体表面を覆っているんですの。これによって、ある程度身体周辺の環境を調節できるんですのよ。暑い季節は涼しく、寒い季節は暖かく。だからワタシ達は火の月でも焔摩の月でも、魔力が切れない間はほぼ影響を受けずに活動できるのですわ」
「…………え……ずる……」
なるほど。私は人間で、魔力が無いから。周囲の調節なんてできなくて。だから、こんなに暑くて。熱くて。
魔力って、ほんと便利だよね……。
ああ……。
駄目だ。
「ちょ……愛歌姉さまっ!?」
「愛歌さま!」
「おねぇさま!?」
どさり。
私、何回気絶するんだろう。
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