第23話 涙がかわいて虹が出るまで
その日は初めての添い寝をして。太郎さんの尻尾がもモフモフしていてとてもあたたかったよ。
そして翌朝。朝食を丁寧に食べ終わってから、緊急会議と称して、昨日あったことをほぼすべて女中さんたちに話した。ただ、太郎さんとしては、どうしてもお静さんを信頼しているということで、お静さんが毒を盛ったことだけは言わなかった。
「それでは、わたくしたちはなにをすればよいのでしょうか?」
さすがはイチコさん。話が早い。
「とりあえず、お静さんが青い色が好きだという情報だけは握っています」
でも、これだけじゃなぁ。
「お静様、本当に信用できんの? ってか、青が好きとか言っておいて、本当はピンクとかそういうのが好きなんじゃないの? それに、お静様は現在問屋にいるんだろ? それだと、どっちが作った服なのか、お静様は知っていて、そっちを選ぶんじゃねぇーの?」
その可能性はあるかもしれない。
「そうですわね。お静様は常に華やかな着物を召しておりましたから」
そう聞いて、あたしはある可能性を太郎さんのケモ耳に問いかけた。
それは、可能性として、問屋さんの着物の着色の時に、自分の言うことを聞くという薬が混ざっていたのではないか、というもの。
だけどそれは、あくまであたしの想像でしかなく、証拠はなにもない。
けれど、太郎さんが知り合ったばかりのお静さんは純粋だったと言うし、太郎さんのお父様が執拗に太郎さんを毛嫌いした理由もそれなのではないかと思えば、色々と繋がってくる。
やっぱり問屋さんが怪しい。けど、迂闊にそれを口に出すこともできない。
「あ、あのっ。ごめんなさいっ」
あたしと太郎さんがごそごそ話しているうちに、なぜだか急にミコさんがあやまった。
「どうしたのだ、ミコや。急に夏希に頭を下げるだなんて」
「あた、あたしっ」
ミコさんは、嘘をついてしまったことを後悔してるんだ。でも、それの理由を太郎さんには聞かれたくはない。今にも泣き出しそうなミコさんに、もういいよ、と言った。だってミコさんだって嫌なことを思い出したくないだろうから。
「ゆ、許してくださるのですか? 夏希様」
「許すもなにも、ミコがなんかしたわけじゃねぇーじゃん。だから、くよくよすんな」
おおぅ。ヨンコさんがあたしの代わりに言ってくださった。
「そうです!! そして、みなさんにはお願いがあります」
「そ、それは我にもできることか?」
ふふっ。太郎さんってば、可愛い。
「はい。みなさん、できることをしてくださればいいのです。あたしは、お静さんが嫁いだ時に着ていた花嫁衣装を復元します! 太郎さんはその時のことをなるべく多く思い出してください。お静さんの記憶が戻るように、と」
「おお。夏希はなんと優しいのだ。なぁ、みなの衆」
「のろけるなよ、王様。夏キングはみんなのもんなんだぜ?」
あらま、いつの間に。
つづく
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