第8話 ひょえ~。突然始まる十番勝負!
今まで見てきた中で一番怖い睨みをあたしに向けたお静さんは、悔しそうに地団駄を踏んだ。
「あんたねぇ、離縁したとはいえ、よくもまぁ人の亭主にちょっかい出してっ!!」
あ、あれ? 気品漂う大人の女性。そんなイメージだったのに。まさか、こんなに面白い女性だったなんて。
「そう絡むでない。元はと言えば、お静と夏希、出会う順番が逆だっただけだ。ちなみに連れてきた年齢だけで比べると、お静より夏希の方が年上ということになる」
「ちょっとぉ!! 太郎様、なんでそんなにデレデレしてるのよぅ!? 出会った当時、この女はまだクソガキだったじゃない。それってもしかして、太郎様はロリコンだったってことじゃない!? むしろ、合法ロリが目的だったんじゃないでしょうねぇ!? あー。だっから、わたくしには指一本触れなかったわけだ」
「そうではなく。我はお静に触れたくなかっただけだ。そっちの性癖を持ち合わせておらんからな」
た、太郎さん。そこまで言ったらお静さんが可愛そうだよ。それにしても太郎さん。お静さんは多少気性が激しいところもあるけれど、どうしてこんなに綺麗な人を? あと、性癖がどうとか。ますます謎が深まっていくじゃない。
「ふん、まぁいいわ。夏希さん。あなたがほんのわずかでも太郎様のことを好きだとおっしゃるのならばしかたありません。一週間で十番勝負と参りましょう」
「な、なんの勝負ですか?」
「うっふふっ。一週間、いいえ、六日だけ、お互いの女中を三人ずつ交換しましょう。そして、最後の七日目に、どちらのお嫁さんの方に好感を持ったのか、女中たちに選ばせるの。もちろん、人数が多い方が勝ち。どう?」
うぐっ。なんだかそれって、あまりにもお静さんに有利な気がするのですが?
けど、あたしが反論しようとするその前に、太郎さんが勝手に面白がってしまった。
「なるほど!! それはよいではないか。夏希のことを知ってもらえるチャンスでもある。お静、ちゃんと公平に女中を振り分けるのだぞ?」
「もちろんですわ。太郎様。ふふんだ。もう太郎さんだなんて、気安く呼びかけられませんわよっ」
こうして、一方的に十番勝負を決められてしまったのだった。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます