第2話 いったい何が起きているのだろう?
「あ、わかったぁー。あたしが部屋の掃除しないから怒ってるんでしょう? やります。ちゃんと掃除しますから」
なにしろ、布の切れ端やら糸くずやらが絡まって床に落ちてて、いわゆる汚部屋状態だからね。いつかは掃除をしなくちゃって思っていても、なかなかね。
えへへっと、いつもみたいに笑って返したんだけど、お母さんの不思議そうな顔は変わらない。
やだ。なに? どういうこと?
「ただいまー。母さんや、そこで
え? なんで? お父さんも弟の健作まで、なんで他人行儀なの?
「母さんや、お客さんにお茶くらい出してやりたまえ」
「ええっ? だってこの人、知らない人なんですよ? しかも、突然二階から降りてきて」
え? 待って、これってあたしを騙すための、そういうあれ? いいから。もうわかったから。掃除しますからそういうの本当にやめてよぉ!!
「そうなのかい?」
お父さんはあたしを見つめて首を傾げる。
「父さんも知らない人だなぁ。健作は? お前の彼女なんじゃないの? 少し年上みたいだけど」
すると、今度は一同が健作に注目する。ところが、頼みの綱の健作まで、あたしを知らないと言い出した。
「おれにはちゃんとした彼女がいますぅ〜。こんなおばさん、知らないよ」
殴ろうか? 殴ったら正気に戻るのか?
腕まくりをして玄関に立ったまま動かない健作に近づくあたしを、お母さんがいさめる。
「まぁまぁ。ところであなた、いつから二階にいたの?」
「だから、もうそういうの辞めてよ!! あたしは雨月
必死に訴えたのだけど、みんなはあ然としている。
「母さん、警察を呼びたまえ」
「待って!! あたし、この家の二階に住んでるのっ!! 部屋すっごく汚れてるけど、ね?」
そうまで言うのなら、みんなで二階に行ってみようじゃないか、とお父さんは渋々言ってのけた。
あたしが先頭に立って階段を登って行くと、なんだか変な感じがする。
「え? うちの階段、こんなに広かったっけ?」
それに、なんだか少しおしゃれだし。
二階まで登りきったあたしは、更に驚く。
「なんで? なんで知らないドアがあるの?」
眼前に広がる赤いドア、青いドア、白いドア。全部知らないものばかり。
「そこは全部おれの部屋でーす。あのー、おれも疲れてるんで、もう帰ってもらってもいいっすか?」
ヘナヘナと力の抜けたあたしは、部屋の中を確認する元気まではなかった。
ここには、あたしの部屋がない。
しょぼくれて階段を降り始めたあたしに、お母さんはお茶なら出しますけど、と話しかけてくれた。
「ごめんなさい。あたし、何か勘違いしていたみたいで。すぐ、出ていきますので」
そう言うと、あたしの靴が一足もない玄関を乱暴に開けて家から出ていくことにした。もちろん、裸足で。
つづく
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