第19話 おれは調べる(後編)
桜花の声が響き渡った後、小羽は咳払いを一つ。
「せやねん、そこが大事や…誰やねん、道満がどうこう言い出した奴は!」
「あんさんやないか!まあ、そこは置いといたる。魔法箒や」
脱線した話が本筋に戻る。小羽によると、重要なのは三要素。
「まずは、あんた自身の素質やな。性格診断やらなんやらして、最適なポジションを確認する」
「最適なポジション?」
魔法少女…特に魔法箒には、最適な戦闘距離がある。前衛として戦うのに適した魔法箒があれば、後衛として、敵から距離を取って戦うのに適した魔法箒もある。戦闘距離は、魔法箒によってまるで違ってくるのだと、小羽は語る。
「例えばや、刀と銃でやり合うやろ。近距離で。どっちが勝つやろ?」
「そりゃ、刀じゃねえの?」
「せやな。なら、銃手が屋内にいて、剣士と有効射程一杯の距離があれば?」
「剣士がどんだけかは知らねえけど、銃じゃねえ…?」
つまり、その距離感を前衛・後衛と呼んでいるのだと、小羽。
「でも、悲しいかな…実際と理想はちゃうモンや。理想は後衛やのに、前衛の武器しか呼び出せん主神と契約してしもた眷属なんて、これまで
道満と契約した小羽には、眷属に移された神の力を弄る能力が備わっているらしい。
「神の在り方を正すんや。兄弟姉妹を見渡して、眷属自身に相応しい在り方をしている存在を導き出す。そして、弄る。小羽はよぅ慣れとるから、心配は要らん」
「弄るのは、あくまで神から切り離された、宿ってるだけの力やからね」
「へえ…」
分析、改造、と来て三つ目の要素が―――
「鍛造やな。あんたが魔法箒を自在に振るえるように、長すぎず短すぎず、弱くなることの無いように矯め直すんや。これは大変な作業やで?」
実際に魔法箒が完成するまで、実に1カ月かかるのだと言う。
「1カ月…」
「その間に座学やらなんやらもやるで。なんかあんたは免除しよかーとか言われとるらしいけど」
「なんで?」
「あてもよぅ知らんけど、あんた、中々詳しいらしいやん?だからちゃうの?」
未知の怪物相手に初陣を果たしてもケロッとした姿や、軍事知識に明るい様子から、魔法少女としての心構えを説く必要が無い、とマッカネンは評価していた。
「まあ、しばらくはあてとマンツーマンで訓練や。要ると思ったら進言するから、安心しとき!」
さて、と小羽は柏手を打った。
「そうと決まればまずは性格診断やな。2時間みっちりと頭の体操してきーや」
「2時間も…?」
「頑張ってね!」
別室で桜花への質問が繰り返されている間、小羽は小夜子に質問をしていた。
「ふーん、戦場で会うたんやねぇ」
「うん、東帝府で看護婦やってた時は、まさかベルガエまで来るなんて思ってもみなかった」
「せやろなあ…あても笠置山で歪みと出会すまで、こんなことになるとは夢にも思わんかったわあ」
普通に相槌を打ってくる相手に、小夜子は親しみやすさを感じていた。
「…なんか、小羽ちゃんって話しやすいね。皆にそうなの?」
「ああ?まあ、魔法少女としては、あては優しい方やろなあ…昨日の2階みたいなんは日常茶飯事やで?」
「そうなんだ…クレアちゃんも優しかったし、皆、大変な時があるだけなんだろうね」
「せやねぇ…それを理解してくれてるだけでも、あんたは良いカウンセラーになれるわ」
「そうかな?」
「そうやよ。今までに逃げ出したカウンセラーの
「うん…」
彼女でさえ、覚悟を持った職業人を追い返す一面がある―――その事実と、昨夜の事件は小夜子の中で密接に絡みついた。
「深入りするなら、生半可なことすると、命に関わるで?」
「そうだね」
桜花だけではない、魔法少女全てとの付き合い方を、今後も小夜子は模索していくことになる。
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