第35話 花
「第十五回、ザキヤマ王杯決闘大会、優勝者はゴールド!」
「おいおい、なんであいつは一人も殺さないんだ?」
「オレたちは殺し合いを見に来てるんだぞ、冗談じゃねえぞ!」
「今年はつまらねえ! なんであいつは殺さねえんだ!」
そんなヤジが飛ぶ中、優勝者への賞品の授与が始まる。
「皆のもの静まれ、静まれえ! これより王のお言葉である!」
「ゴールドよ、望みのものはなんじゃ?」
「王よ、どうか花をお育てください」
「なに?! 我に花を育てよと?」
「はい。一輪でかまいません。種から花が枯れるまで全てお一人で」
「何を言う、ゴールド! 優勝者は何でも望みが叶うのだぞ?! 王が何でも叶えてくださるのだぞ!」
「はい、ですから私の望みは王に花を育てていただく事にございます」
「ふんっ! 我はそなたが好かん。好かんが優勝は優勝だ、望みのものはなんでもくれてやる。が、しかしゴールド、花を育てても我は途中で枯らしてしまうかもしれんぞ」
「それでもかまいません。それでも良いのです。ご自身の力で花をお育てください」
「ゴールド! 王に対してなんという!」
「よい。」
「し、しかし!」
「ふん、我に花を、か。ふっふっふ。そうか、花をな」
ザキヤマ杯はこの国で一年に一度コロシアムで行われる決闘大会。
ルールは特になく、何をしても良い。
昨年の大会では孤児院の再建を目指して出場したシルバーは決勝戦の中で孤児院の子どもたちを人質にされたことを知り殺されてしまった。
今年、決勝ではシルバーを殺したジャバルを相手にゴールドは戦い、殺さずに優勝した。
「シルバーは私の弟だ」
「なっ! 殺せ! オレは弟の仇だろう!」
「私は戦いに勝った。お前の命は私のものだ。私が決めたのだ。二度と、二度とこの戦いには参加するな。去れ!」
「あの戦いを見せられてはな。構わぬ。花を育てろか」
王はその後、このコロシアムでの殺し合いを行うことをやめたのだった。
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