第34話 寓話
「困ったもんじゃ、困ったもんじゃ」
「酋長、なにをそんなに困ってらっしゃるんで?」
「なにがあったんだぃ」
「どうしちまったんだ、酋長」
ここはとある山の麓のとある村。
村の酋長は地面につくほどの長い髭を撫でながらしかめっ面で困り果てている。
村に新種のきのこがポコポコと生え茂った時もポコポコ音頭を作って一人踊り始めたりした、そんな何事にも動じない酋長が困り果てているのだ。
村のみんなもこれは一大事だと大騒ぎ。
「見てみぃ!」
酋長が指さした先には村に住んでいれば嫌でも毎日目に入る山の頂上だった。
なんとそこからもくもくと黒い煙が吹き出している。
「山の神がお怒りじゃ!」
今にも噴火が始まりそうな山を見ながら酋長が長い眉をへの字にして困り果てている。
村のみんなは大騒ぎ、酋長にもどうにもできない問題を村のみんなが解決できるはずもない。
「オレに任せてくれないか?」
そう声を上げたのは村一番の変わり者、ウッジャだった。
「なにをしようってんだ?」
「どうするんだい、酋長!」
「どうしたらいいんで? 酋長」
「ここはウッジャに任せてみよう」
顎髭を撫でながらいつもの細い目がなくなるほどの細い目でウッジャを見つめる。
「オレに任せてくれよ!」
ウッジャはそう言うと村のみんなを引き連れて山の山頂を目指して歩きはじめた。
山頂の黒い煙はますます大きくなり、地響きも始まった。
「大丈夫なのか、ウッジャ」
「どうするつもりだ、ウッジャ」
「さすがにどうするつもりなのか教えてくれよ、ウッジャ」
村のみんなが心配になってウッジャに話しかけるが何事もないようにウッジャは村のみんなと頂上を目指して歩き続ける。
その時、轟音と共に山はついに噴火し始めた。
村のみんなは山の噴火とともに吹き飛ばされ、むらも跡形もなく消え去りました。
非常時だからといっていつもおかしなことをしている人を信じてついて行ってはいけません。
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