第33話 手に入れたいものは

「アキラ、今晩付き合えよ」

「イヤよ」


「なんでだめなんだよ」

「なんでもよ。こないだもヒドイとこに連れて行かれたじゃない」


「そう言うなよ。なあいいだろ、アキラ、付き合えよ」

「イヤよ。アレでしょ? 裸の男の人がいっぱいみたいなところでしょ? あのさ、ヤマモト。わたしがああいうの喜ぶと思ってるなら間違ってるからね」


「好きだろ、ああいうのも。人生いろいろ経験しとかなきゃだろうが」


「その経験が私の人生のどこに役立つのよ」


「何事もな、経験してないよりしといたほうがいいぞ。なんだったらその後もオレと」

「あきらめて。わたしがそんなの喜ぶ女じゃないってことはわかってるでしょ?」

 アキラは去っていく。



「しょうがねえなあ。お、じゃあお前、食事行く?」


「ええ? 今の流れで私を誘うんですか? ヤマモトさん、節操なさすぎですね。で、奢りですか?」


「んー、ああ」


「そっか奢りかぁ。どうしよっかなあ」

「なんで悩むんだよ、どうせ暇なんだろ?」

「そうでもないんですよ、今日は他からも誘われてますし」


「嘘つけ、どうせネコかなんかだろ?」


「ネコじゃないですよ。この後食事にって。あ、そうだ、ヤマモトさんが言ったんですよ。欲しいものがあったら取りに行け、奪い取れー、って」


「いや、そりゃ言ったけどさあ、誰?」


「局長」


「マジで? んでもありゃジジイだぞ?」

「ええ」


「いや、でもよお」


「もしかすると明日からヤマモト君って呼んでるかも」

「マジで? 今日食事に誘われたんだろ? え? どこまで?」


「いきなり最後まで」


「いやどうかなあ? それはどうだろうなあ」


「言ったんじゃないですか、欲しいものがあったらなんでも使って手に入れろって」


「言ったけどさあ」


「だから、ほら。ね、女を使って」

「マジで?」


「あ、そろそろはじまりますよ、会議。今日の議題、ヤマモトさんの処遇らしいですよ。局長が言って」

「え? やりすぎたの、オレ」

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