第32話 エクスカベーターの今

「よお、アダン! 元気にやってたか?」


「え? ギンゾウさん?! どうしてここに?」

「どうしてってお前、そろそろオレに会いたいだろうなあって思ってさ」

「おかしい。ギンゾウさんがまともなことを言っている」


「何だよアダン、失礼なやつだなあ。オレが今までまともじゃないことを言ったことが」

「まともなことを言ったことがありませんよ。で、ホントはなんなんです?」


「ん、まああれだ、仕事?」

「なんで疑問形なんですか」

「だってオレなにするのか聞いてないんだもん」

「そうでしょうねえ。クルミさんはなんと?」


「んー、教えたくない」

「は? クルミさんからの伝言を伝えに来たんでしょ?」

「そう」

「なのに教えたくないってどういうことです?」


「なんかさ、オレはわかってます、みたいなそういうのがさ、鼻につく!」

「いや、ちゃんと伝えてくれないとって、ああわかりました」


「お、さすがアダンちゃん。オレのいいたい事はエスパー並みになんでもわかっちゃうな」

「いえ、違わないけど違います。で、ツワブキさんはいつ来るんです?」


「なんだよほんとにつまんないなあ、遊ぼうよお」

「遊びませんよ、特にあなたとは」


「けっ。なんだよ、せっかくクルミちゃんからの伝言を伝えようと思ったのに教えてやんないからな!」

「最初から伝える気なんてないんでしょ?」


 なぜか僕は今、旧王国領バインランドにいる。ここで大量の魔獣の骨が見つかり、帝国からモルぺス販売発掘事務所が委託を請負い出向いている。

 僕たちは発掘は発掘でも闇に埋もれている事件を手掛けるはずなのに、ここ数ヶ月、本物の発掘を行っている。


 まあ発掘って言うだけでコウタロウさんは喜び勇んで毎日でかけているけど、ギンゾウさんが現れたってことは事が動き始めるってことなんだろう。


 この人は物事を悪い方に悪い方に、がモットー。


 さあ、ここからはなにが起こるのか僕にもわからないけど。

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