第29話 国家情報保安局

「で、何を?」

「松澤村っす」


「松澤村?」

「はい、群馬の奥地に松澤村っていうのがあって、そこで昭和20年代に猟奇的連続殺人が起こってその犯人が復活したって噂をネット上にばら撒いてそのレポートをまとめたんす」


「で、結果は?」

「テレビ・ラジオ、週刊誌、そりゃあもう大騒ぎ」

「ほー」


「じゃライナー、エトウ君はあなたにしばらく預けるわ、よろしくね」

「ああ」


「あのお、あれっすよね、これから俺たちバディってことなんすよね?」

「おいウォード」

「え? ウォード? エトウです」


「俺たちは国に雇われた頭脳。国が一人の脳みそにすべてを賭けるんだ、バディが欲しければ犬を飼え」

「え、じゃあオレは何をすればいいんすか? で、なんなんすかウォードって」


「お前がウォード、俺がライナー。それが答えだ」

「すいません、まったくわかりません」


「残念だが俺もついこの間やっとわかったんだ、悔しくて教えられないな」


「ふふふ、仲良くやっていけそうね。じゃ、ライナー。この子に私たちの仕事をおしえてやって」

「ああ。ウォード、新潟県である女性が発見された。その女性は今から十八年前に誘拐され行方不明になっていた少女だ」

「マジすか?」


「ええ、マジよ。だけどマジかなぁ?」

「え? どういうことっすか?」

「当時から警察が何もしていなかったわけはないよな」

「はい、そうすよ、はい」

「当時、警察が何もしていないわけはない。だが表沙汰にはできない問題も」

「あー、北の国」


「見え隠れする隣の国を調査していましたとは口が裂けても言えない」

「そんな事を口にしたら国際問題になっちゃう」


「あー」


「女性発見当時、署長は一報を聞いても温泉旅館で旅行を楽しんでいたんだそうだ。しかも男四人で賭け麻雀してな」


「そんなことマスコミが知ったら大問題に、あ!」


「そう。そうやって事件の焦点をぼやかし有耶無耶にして国家を守るのが俺達の仕事だ」

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