第6話 HERO

「おじさん、どう思うんだよ」


「どうってお前、俺は別に何とも思わないけどな。なに? あれか、はい。お前の母さん、俺に惚れてんのか?」


「いや、そういう話じゃないだろ? なんでそんな話になるんだよ」


「じゃあどういう話なんだよ」


「それはあれだよ。悪かったよ、母さんを怒鳴ったりして」


「わかってるじゃないか。ま、俺じゃなくて母さんに謝れ、母さんに。だけどお前、なんでそんな母さん怒鳴ったりしたの?」


「そりゃああれだよ」


「なんだよ」


「彼女がオレのやってるバンド見にきて似合ってないからやめろとか言うから、つい」


「え? 母さんは?」


「母さんは別になんも言わないけど」


「え? そんでお前、全然関係ない母さんに八つ当たりしたの?」


「だから悪かったって!」


「なあカツヒコ」


「なあに?」


「お前のカッコよさはなんだ?」


「なんだよ急に」


「お前のカッコよさはなんだ?」


「んー、そうだなあ。彼女とかにキャー、カツヒコ君ステキ! とか、他の女子にカッコいいって言われるとか?」


「なあ、カツヒコ。お前に少し話をする」


「え? 話? いや、なんだよ、それ。いらないよ、どうせ母さんに優しくしろとかそういう事だろ。もういいよ、帰って母さんに謝るよ」


「まあそう言うな。あのな俺たちは昔、全員ヒーローだったんだ」


「は? なにそれ。またおじさんの作り話? もういいって」


「お前もだぞ、カツヒコ。昔はお前もヒーローだったはずなんだよ。思い出せ、その時お前は誰かにカッコいいって言われたかったか? 違うだろ?」


「ガキの頃の話? そりゃあまあそうかも知んない」


「そうなんだよ。ま、カッコよさなんて人それぞれでいいはずなんだけどな」


「じゃあおじさんのカッコよさってなんなの?」


「俺か? 俺はまああれだ、タロウだ」


「誰だよタロウ。知らないよ」


「まあいいんだよ、俺のことは。カツヒコ、お前のカッコよさはお前が見つけないとなんだぞ」


(完)

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