第4話 A・S・S
「なんでだめなんですか?」
「なんで、とおっしゃられても」
「え? でもあなたが責任者なんでしょ?」
「はい、私はアマテラス・セキュリティ・サービスのミカミと申します」
「名前なんてどうでもいいから出してよ」
「ですから先ほどから何度も申し上げていますように、この箱から中身は絶対に取り出せません」
「困る」
「もうずいぶん長い間このやり取りを続けられておりますが、決して中身は取り出せません。何度も申し上げておりますが、当社ではこの箱に一度入れた物は決して取り出さない、という契約のもとサービスを提供しております」
「訴えるわよ!」
「かまいません。当社はご契約者様と先ほど申し上げた契約を取り交わしており、その際、いかなる理由があろうと契約期間中に中身が出てしまった場合、わが社の責任、その他一切の責任はご契約者様、と取り交わしてございます」
「もう! なんなのよ! 契約した私が出してって言ってるんだから出してよお!」
「お客様、えーっと、確かハラ様とおっしゃいましたか。そのハラ様との契約は三年間となっておりますので残り一年と少しとなっております。その時にまた、お越しくださいませ。それでは」
ミカミが頭を下げると奥からガードマンが現れ、ハラは外に連れ出されてしまった。
当社システムは様々な取り組みがなされております。
先ほど申し上げました通り急に開けろと言われましても開けられないシステムなのです。
開錠のシステムでは我が社がランダムに全国から七名の人員をピックアップし、その七名にそれぞれランダムな七桁の数字が与えられ、そこからさらにそれぞれがランダムな方法で箱までたどり着きます。
開錠キーはその中の一つで、その時まで誰が本物のキーを持っているのかすら知りません。
皆様、何か隠しておきたい物などございましたら、ぜひ我がアマテラス・セキュリティ・サービスをご利用ください。
(完)
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