第14話 ヘブン
三人の男女が深い森を抜け、開けた場所に出た。
「だからなんでこうなっちゃたわけ? どこにあんのよお、ヘブン!」
「それを俺に言うのかよ。おかしいだろ? だいたいなんでこんな森の中にほんとに来ちゃうんだよ!」
「いや、だって行くぞお! って言うから」
「途中で騙くらかして帰るつもりだったんだよ。それをなんだよ、デビュー五十周年の歌手の歌! あれを最初っから順番にかけやがって」
「そうなんすか?」
「そうなんすか、じゃねえよ。どうすんだよ、このままじゃ俺たちも遭難者扱いされちまうぞ!」
「前に来た時はこんな感じじゃなかったんすけどねえ。絶対迷ってますよね」
「迷ってますよね、ってお前が運転したんだろ?」
「そうっすねえ」
「ねえ! なんであんた達二匹で喋ってんの!」
「なんだよ匹って。ああ、あっちじゃねえか?」
「ええ? ほんと?」
「こっちかな」
「どっちよ!」
「こっちじゃねえか?」
「絶対嘘、そっちってさっき来た方じゃない!」
「あのさあ、何度もいってるけどなヘブン」
「何度も行ってるんなら早く案内してよ!」
「違う違う、あー、もう! 何度も言いましたけどね。ないの! ヘブン」
「え?」
「ないのっ! ヘブンなんてないんだよ!」
「だって! 先輩の友達も、友達の知り合いもあるって言ってたもん。友達のお兄さんは行ったって言ってた」
「それはみんなが嘘をついてんの。みんな騙されたいんだよ」
「なんで!?」
「あのな、それが俺たちの仕事なの。みんなを騙すのがおじさんの仕事なの」
「嘘つき! いいわけばっかり!」
「そうだな、ごめんな」
「じゃあどこにいるのよ! ヒロ君」
「そんなのわかんねえよ」
ヘブンは存在しない。
彼がSNSで受けを狙った作り話だからだ。
それをテレビやSNSが大きく取り上げ、一気にヘブンが本物になった。
ちなみにヒロ君は日本から戦争に参戦するため防衛省が極秘に組織した<ヘブン>に在籍している。
(完)
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